【わたしの看護婦さん/神戸貴子さん、インテージ/深田航志さん 鼎談】
高齢者とデジタルの現実 ~高齢者のデジタルデバイド解消と、その先の未来~

2021.08.05 座談会

 

 第一部は、高齢者とデジタルデバイドの現状について、看護・介護の最前線で事業をなさっている神戸貴子さんに、地方高齢者のリアルなお話を伺うことができました。続く第二部は、調査・メディアデータのプロである深田航志さんの知見をもとに、スマートテレビの現状と、デジタルデバイド解消のカギについてお話を伺いました。

 

〔第二部〕…スマートテレビの現状とデジタルデバイド解消のカギについて

スマートテレビの普及が、デジタルデバイド解消のカギになる!?

——高齢者とデジタルデバイドの現状について、看護・介護の最前線で事業をなさっている神戸さんにリアルなお話を伺うことができましたが、ここからは、現在、比較的操作が簡単な家庭内のデジタルデバイスであるテレビにおいて、視聴可能な動画コンテンツが格段に拡がったり、Webブラウザの機能、スマートフォンやタブレット、そしてIOT家電との連携したり、高齢者向け機能拡張にも期待がもたれるような変化が起こっていることを、調査・メディアデータのプロである深田さんに伺います。深田さん、まず「スマートテレビ」についての現状を教えてください。

深田)まずはこちらの調査をご覧ください。

(出典:IXT2021年 スマートテレビ利用実態調査結果)

 まずテレビの普及率ですが、これは97%ぐらいです。一方、スマートテレビの普及率は個人ベースで32.7%。1/3の方はスマートテレビをお持ちだということです。
 また、テレビ毎のネット結線率でいいますと、テレビのうちその1/4がスマートテレビ、直接インターネットをつなげているテレビという状況になっています。さらに、スマートテレビの保有者は、年収500万円以上の方に多いこともわかっています。

用語解説
STB:セット トップ ボックス。STB=Set Top Box。ケーブルテレビ放送や衛星放送、地上波テレビ放送(デジタル放送、アナログ放送)、IP放送(ブロードバンドVODなど)などの放送信号を受信して、一般のテレビで視聴可能な信号に変換する装置のこと。
コネクティッド TV:テレビとインターネットを組み合わせたもの。コネクティッドTVというカテゴリーの中に「スマートテレビ」が属しています。テレビに直接Wi-FiなりLANケーブルをつなぐのをスマートテレビと定義づけています。

(ZOOMでのリモート鼎談。深田航志さん)

——スマートテレビ保有ユーザーの実態、利用実態についてはいかがでしょうか。

深田)皆様もなんとなくお気づきだと思うのですが、いわゆる「サブスク」と言われるNetflixとかAmazonプライムビデオとかHulu、こういったものを視聴される割合が高くなってきています。要するにテレビの受像機なんだけども、テレビ局が流す放送だけではなく、海外ドラマや映画など、そういった新しい配信コンテンツ視聴にシフトし始めている傾向が見て取れます。さらには、テレビの受像機でYouTubeを見る人が増えてきているという結果も出ています。

(出典:インテージ MediaGaugeTV)

——70代以上の高齢者の方々で、以前からのテレビ以外の使い方している(NetflixとかAmazonプライムビデオなどを見る)方は、どのくらいいらっしゃるのでしょうか。

深田)そこは残念ながら、フィールド(現地)調査により、実際に調査票や面接調査を行うなどしないと、高齢者のメディア実態を把握するのは難しいと思っています。

神戸)私からしたら、「NetflixとかAmazonプライムビデオなどを見る、そんな高齢者っているのかな?」というのが正直な感想です。スマホをガラケーとしてしか使っていない高齢者が、リモコンでIDとパスワードを入れてとか、そういうのは難しいと思います。地方の高齢者であれば、なおさら。

深田)昨今ネット上では、「テレビの個人視聴率では男女の49歳以下を中心にみられている」などといろいろ話題になっています。実際、テレビ業界ではそのような傾向がすごく強いと思いますね。そうすると、50歳以上の視聴者たちが置いてきぼりになってしまうのではないかと言われています。
 比較的購買活動が活発な若い方向けに自分たちの商品をアピールしたいという広告主はいます。その一方で、日中テレビの前に座ってる時間が多いのはご高齢の方たちなわけです。最近でいうと、今春、TBSの長寿番組「噂の!東京マガジン」が地上波放送を終了し、BS-TBSでの放送に移動しましたし、46年も続いた視聴者参加型クイズ番組「パネルクイズ アタック25」は9月で終わるそうですしね。
 民放業界全体が若い視聴者層を獲得するための番組制作へシフトして、どんどんご高齢の方たちが好きだった番組が終わっていきます。時代劇も地上波からは姿を消しました。「BSで見られる」という意見もあるのですが、それこそさっきの神戸さんの話からすると「それ、BSテレビの受信を契約からし始めることはできるの?」といった見方もあります。その辺の話って、今すごくテレビ界隈で語られることが多いです。

神戸)ちょっとお金があるような高齢者ですとBSの契約は必ずやっているように感じます。そういう方たちは日中からBS放送を見てらっしゃるわけですよ。「赤い霊柩車シリーズ」とか。そういうところで、高齢者でもデジタルに取り残される人と、取り残されない人の差が出てくるのかもしれませんね。

深田)その差を生み出すのは、お金をちょっと持っているか、持っていないかってことになるんでしょうか。

神戸)そこにお金をかけてもいいと思ってらっしゃるか、どうかという違いかもしれませんね。

——高齢者関連でインタビューをしていると必ず出てくる、その本人の感覚で、“必要か必要じゃないか”ということですね。

神戸)その通りです。

深田)NHKのレポートで「国民生活時間調査2020」というのがあります。男女10歳以上7,200人を対象に郵送で調べている調査です。ですので、インターネットを使ってない人たちも対象に入っています。そこで1つ特徴的な点を言いますと、ご高齢の方が100人いたら、そのうち95人はテレビを見ているということなんです。いまの話の流れ、課題を象徴するようなデータなので、ご覧ください。

出典:NHK放送文化研究所「国民生活時間調査」
https://www.nhk.or.jp/bunken/yoron-jikan/)に一部加工
~赤い丸印を付けています~

 

認知症の早期発見にもなる?テレビのスマートリモコンの可能性とは?

——例えば、スマートテレビですとか周辺のデジタル機器、そして集められたデータが高齢者に今後どのような便益を与えていくのでしょうか。スマートテレビの技術革新について、深田さんのお考えや、予想をお聞かせください。

深田)テレビがインターネットにつながると、スマートフォンやガラケー、タブレットをわざわざ自治体が高齢者に対して、配布する必要がなくなると思っています。テレビのリモコンを使って、それができるからです。
(先のデータから分かるように)ご高齢の方とテレビの相性ってすごく良いので、僕はテレビをインターネットで繋げるのが、地方でのデジタルデバイド解消にはぴったりだと思っています。そういった取り組みをなさっている地方のケーブル会社さんもあると聞いています。

神戸)地方は市町村独自のケーブルテレビを運営していたりします。確かに私たち鳥取県の米子界隈、この近辺でも壁の向こうまではインターネットが使えるぐらいにケーブルテレビが発達しています。あとは高齢者がインターネットに接続してくれるか・くれないか、その違いという話はよく聞きます。

深田)ノバルスという会社の興味深い取り組みについて、お話したいのですが、いいですか? 電池にIoT(Internet of Things、モノのインターネット)の機器を組み込むことを事業化している会社でして、アナログな電池に、最新のIoT技術を組み込むのですが、これがちょっと面白いのです。
 例えば単3電池で動くデバイスがあったとして、この単3電池の大きさのアダプターがあって、その中に単4電池を入れるんですね。単3電池と同じ役割するんですけれども、そのアダプターの中側にはモジュールが入っていて、Bluetoothで通信機器とつなげることができるんです。

 例えば、この方法でテレビのリモコンをスマホと結びつけると、家族の中の誰が/何チャンネルを/この時間押した、といったデータが把握できます。そして、この技術は高齢者の見守りにも活用できるのです。この辺りのIoTによる遠隔地からの見守りは、いろいろな企業が取り組んでいますが、ノバルスの取り組みが他社と違うなと思ったのは、この仕組みがテレビのリモコンで使える点です。

(出典:ノバルス株式会社 Mabeee説明資料より)

 先ほどのデータからもわかる通り、ご高齢の方は、まず間違いなく日中テレビを毎日見ているはずですし、認知症初期の方をリモコンの操作で早期発見できるのではないかと思っています。というのも、認知症初期の方は同じボタンを何度も押したり、ボタンの長押しをしたりと、行動が変容するそうなんです。
 そういう異変を、テレビのリモコンでリアルタイムに感知できたら…、それって見守り・駆け付けサービスにも使えますし、認知症の診断テストにもなるのではないか、と。アナログな電池と、最新のIoTをマッチさせて、さらにそれを神戸さんがされているような介護や、認知症早期発見に役立てられるんじゃないかと。そう思って、この場でご紹介させてもらいました。

——なるほど。こういったスマートテレビの高齢者向け機能が普及していくことで、高齢者も様々な便益が享受できるかもしれませんね。特に地方には、非常に大きな便益をもたらすことができるのかもしれません。また、近ごろ良く言われている「ウェルビーイング(Well-being)」、非常に豊かな暮らしや幸せに「健康寿命」や「介護負担の削減」を加えたものが、シニアの方々とその周囲に提供される可能性があるのかもしれないですね。

 

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2021年デジタルの日