【続・デジわかオリジナル調査】 本当に便利?モバイルオーダーに初挑戦してみた

2024.10.25 行列・混雑解消

前回、行列を回避できるサービスの利用動向についてアンケート調査を行いました。乗車券予約・モバイルオーダー・ネットバンキングの3カテゴリの利用状況について、すべて利用していない人は42.9%という結果に。コロナ以降このようなデジタルサービスが普及してきたものの、まだまだ使わない人は多い様子です。調査の結果、これらを活用しない理由として、『得られるメリット』と『登録する手間』のバランスが影響しているのではないかという仮説が見えてきました。

そして今回は、特にコロナ以降で利用者やサービスの数も増加した「モバイルオーダー」に着目。今まで使っていなかった人に協力をお願いし、インストールから利用までの様子をレポート。仮説の検証をしていきます。

使ったのはモバイルオーダーにおいて代表的な「スターバックス」「マクドナルド」の2サービス。同じモバイルオーダーというカテゴリではありますが、使いやすさなどに違いはあるのでしょうか。

今回対象者として協力いただいたのは弊社会長・社長・そして新入社員3人の計5名。
前回のアンケート調査では、モバイルオーダーの利用率において年代による差がありました。一番大きい差分があったのは「70代以上」と「20代」で、36.4ポイント差です。今回は対象のモバイルオーダーを利用したことがない方々に対象者となってもらいました。年代ごとにモバイルオーダーを使わなかった理由や、つまずきポイント・使い心地の違いがあるのでしょうか?

インタビュー対象者 計5名
【スターバックスチーム】
・オリコム 代表取締役社長
・新入社員A
・新入社員B

【マクドナルドチーム】
・オリコム 取締役会長
・新入社員C

 

本日はよろしくお願いします!まずは、そスターバックス・マクドナルドは皆さんにとってどんな場所ですか?

【スターバックスチーム】
新入社員A:社会人になってからよく行くようになりました。会社のそばにあるので、眠気覚ましにカフェインを取りたくて。いつもホワイトモカを頼みます。頻度は週1くらいです。店員さんと話すのが楽しくて、今日の天気とかおすすめのドリンクについておしゃべりします。

新入社員B:僕は自分主体で行くというよりも、誰かに誘われていくことが多いです。店の前に出ている看板にその時のフラペチーノが書いてありますよね。それを頼みます。最近バナナを飲んで、おいしかったです。

社長:私はそんなにスタバに行く機会が多いわけではないんですが、待ち合わせで使います。紅茶系を頼むことが多いです。

【マクドナルドチーム】
新入社員C:大人数で遊んでるときにドライブスルーで行くことが多いです。ちょっとお腹減ったから行こう、みたいな。

会長:年末の大掃除の時に必ず行きます。近所にあって、お昼時でもそんなに混んでない。


つまり、こんな場所だと思ってる
【スターバックス】
・新入社員A:その時々の「限定」に出会える、楽しい時間の共有場所
・新入社員B:ちょっと気分を変えてくれるリフレッシュ場所
・社長:人と会うのにちょうどいい待ち合わせ場所

【マクドナルド】
・新入社員C:マクドナルドは安くて小腹を満たしてくれる場所
・会長:忙しいときにササッとごはんを提供してくれる場所

 

■モバイルオーダーを使わなかったわけ

今までモバイルオーダーを使わなかった理由はありますか?

【スターバックスチーム】
新入社員A:モバイルオーダー自体知らなかったです。今回この話を聞いて、そういうのがあるんだ~ってなりました。アプリを入れてどんな得があるのかはまだあんまりわかってないです。

新入社員B:存在自体は知っていたんですが、待つことに抵抗がないんですよね。急いでいるときにスタバは買わないので。誰かと待って並んでる時間って楽しいし、別にアプリ使う必要ないかなって。アトラクションみたいな感じで、娯楽に近いです。

社長:周りでアプリ使ったほうがいいよ!って力説してくる人が何人かいるんですね。でも入れないですね。まず入れることがめんどうくさい。登録とか、インストール後もめんどくさそう。あとスマホの画面が汚くなるのが嫌です。使わないアプリを入れておきたくなくて。あとは出来たてのものが好きなので、直接受け取りたいというのもあります。

【マクドナルドチーム】
新入社員C:スマホのギガがもったいないんです。写真とかの容量が多いのでなるべく余計なアプリは入れたくないんです。あと個人のクレジットカードを持っていないので、そもそも登録できないんじゃないかと思っていました。

会長:そんなにマックに行かないのでいらないなと。クーポンがあるのは知っているんですけど、数十円の差ならまあいいかって。

 

■いざ、オーダーに挑戦。

さて、それではモバイルオーダーで注文をしてもらえればと思います!
インストールから同時にスタート。注文するまでの様子を伺います。

【スターバックスチーム】
新入社員B:何頼もうかな。やっぱり今の限定のフラペチーノにしようかな。

新入社員A:あ、私もそうしよう。さっきおいしいって言ってたメニューってなんでしたっけ?

個人情報を入力し、あれ、メニューどこにあるんだろう…とつぶやきつつ、すぐに見つけた様子。限定のフラペチーノとデジわかメンバーおすすめのフードメニューも購入し、5分ほどで決済まで進みました。

社長:アプリ入れるのってどこからだっけ・・・

社長も入力を終わらせ、メニューの選択も完了。ところが決済でクレジットカードの入力がうまくいかないようです。番号が違うのか、何度もはじかれてしまいます。悪戦苦闘の末、15分ほどでオーダー完了。

みんなで近隣の店舗までテイクアウトしに行くと、すでに商品が用意されていました。ほかに待っているお客さんはほとんどいません。

【マクドナルドチーム】
新入社員C:何食べようかな。マック食べるのめちゃめちゃ久しぶりです。
こちらも新入社員は素早く入力完了。あっという間に決済まで行きつきます。

会長もおなじく決済でエラーが起きてしまったようです。
会長:パスワードが違うって出てくるな・・・これのはずなんだけど。
クレジットカードの入力がうまくいかず、別の決済方法を選択して無事に手続きが終わりました。

マクドナルドにはかなり待っているお客さんがいましたが、すでに商品は出来上がっていました。こちらも無事カウンターで受け取り完了です。

 

■実食。使ってみた感想はいかに

モバイルを利用してみてどうでしたか?

【スターバックスチーム】
新入社員B:なんかスタバにいった感じがしないです。お店で食べてないからっていうのもあるかもしれないですが、ただピックアップしてきただけで、おしゃれな感じがしなくて。

社長:ただ注文するだけなのに、いろいろ個人情報を入れなきゃいけないのが大変ですね。なんでここまで情報が必要なんだろう?って。使いやすさ的にはあんまり親切じゃない感じがします。

新入社員A:確かに英語表記が多くて、サクサクとオーダーまで進む感じではなかったです。でも、注文し終わってから受け取りの時間って無駄だったということに気づきました。確かに店員さんと話すのは好きなんですけど、そのあと1人で受け取りを待ってる時間は好きじゃないんですよ。だから、これから使ってみようかなって思いました。

【マクドナルドチーム】
新入社員C:並ばず受け取れるのが圧倒的にいいところですよね。あとは、僕音楽を聴いていることが多いので、店員さんと話さなくてよくなるのはいいなと思いました。でもやっぱりこのためにスマホのギガを使うのはもったいない気がします。

会長:並ばすにこんなにスムーズに受け取れるのは魅力的だと思いました。でも、支払い登録が面倒で挫折しそうですね。現金を使わずに支払えるのもいいところだと思います。また年末の時には使いたいです。

 

■わかったこと

①サービスがいくら便利で、ある程度その店を利用するといえども、そもそもその店に対する価値の感じ方によって、使う人・使わない人が分かれます。 


つまり、初めてモバイルオーダーを使った人はこう思った

【スターバックス】
新入社員A:ちょっと気分を変えてくれるリフレッシュ場所
→余計な時間を減らしてくれる新しい発見。今後も使いたい。

新入社員B:その時々の「限定」に出会える、楽しい時間の共有場所
→誰かと並ぶ時間も楽しい。むしろモバイルオーダーはその楽しさが減る?

社長:人と会うのにちょうどいい待ち合わせ場所
→スターバックスには場所的な価値がメイン。日常での優先度が低く、そこまでしてわざわざ手間も時間をかけたくない。

【マクドナルド】
新入社員C:マクドナルドは安くて小腹を満たしてくれる場所
→ギガ・決済の手間>並ばない・クーポン 

会長:忙しいときのささっとごはんを提供してくれる場所
→限られた特定のシーンでの飲食。しかし定期的に利用するため、一度登録の面倒さを乗り越えれば、継続的に使う可能性。

 

②インタビューの中で、モバイルオーダーには「並ばずすぐ受け取れる」が以外の価値があることが見えてきました。例えば「出来立てがすぐ受け取れる」「メニューが手元でゆっくり見られる」「何かを中断することなく注文できる(イヤホンを外さなくていいなど)」

 

③やはり世代ごとにアプリの使い心地に差がある様子です。社長・会長ともに日頃からスマホを使っていますが、決済の入力には煩雑さを感じたようです。一方新入社員は最初から最後までほとんどつまずくことなく注文していました。

 

■まとめ

モバイルオーダーを使わないのは「めんどくさいから」という理由が想起されがちです。確かにインストールや登録に時間がかかり、スマホに苦手意識がなくても億劫であることに間違いはありません。だからといって、サービス利用の敷居を下げて使いやすくしても、利用者が増加するかというとそうではないように思います。そもそも、そのお店にどのような価値を感じているかによって、モバイルオーダー使う/使わないが分かれるからです。「めんどくさい」手間をなくすことが、必ずしも利用促進につながるかというと、そうではないと考えます。

モバイルオーダーの導入店ではサービスの価値を「並ばない」こと、をメインに訴求されていることが多いように見受けられます。しかし、サービスを利用したことがない人にとって、それは実際に体験してみないとピンとこないのではないでしょうか。今回、対象者全員が「本当に並ばなくて受け取れるんだ!」と驚いた様子でした。
例えば「さっと受け取れて、お昼休憩がちょっと長くなる」「混み合う店内で待つよりも、事前のオーダーでスマート受け取り」など、表現の工夫ができそうです。

そもそも、モバイルオーダー自体は知っていても利用に至らないのは、このサービスがどんなメリットをもたらしてくれるのかが伝わっていないという可能性も考えられます。「並ばない」以外にも、①カスタム選定にゆっくり時間がかけられる②頼み忘れがなくなるなど、多様な価値がありそうです。このアプリが自分の生活をどう便利にしてくれるのか?までを表現することが大事だと感じました。

またサービスのメリットだけではなく、登録する手間も不透明であることが、より利用の壁を作っているように思います。どのくらいで登録が終わるのか・何を入力するのかがわかるだけでも、安心感をもたらすことができるのではないでしょうか。

「出来たて」を食べたいという話もあったように、モバイルオーダーでは受け取りタイミングが可視化されないということも判明しました。店舗の混み具合やオーダーのタイミングによってはホカホカのものを受け取れない可能性も十分にあります。行列を回避したはいいものの逆に冷めてしまっては、満足度が下がるかもしれません。サービス提供側は待ち時間なく受け取りたいというニーズ以外の部分にも着目したアップデートを加えれば、より利用者が増える可能性もあるのではないでしょうか?

 

取材・撮影
デジタルわかる化研究所 安藤亮司・豊田哲也・柴圭佑・飯野由季

 

〇安藤亮司(左):1996年にオリコム中途入社。20年以上営業部門に所属し2019年に取締役に就任。その後、メディア部門・財務部門を経験し2023年からオリコミサービスの常務に。当研究所立ち上げメンバー。趣味は料理とサッカー指導。

〇豊田哲也(右):2014年にオリコムに入社。6年間デジタルマーケティング支援業務に携わり、その後オンライン・オフライン統合したメディアプランニング業務に従事。当研究所立ち上げメンバー。趣味は釣りと映画鑑賞。

 

〇柴圭佑(左):2020年にオリコムに入社。入社以来5年間営業部門。2022年に当研究所に参画。人見知りをしない性格。趣味は野球観戦(応援)。特技は口を大きく開けること。      

〇飯野由季(右):2022年オリコム入社。データソリューション開発部を経て現在はストラテジックプランナー。2023年に当研究所へ参画。

 

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