【調査レポート】デジタル幸福度 1位は徳島、2位は?〜対面調査だからこそ見えた「デジタル」への想いとは?〜

2023.10.30 リサーチ

「誰ひとり取り残さない」をスローガンに始まった国ぐるみのデジタル化。ただ、実社会に目を向けるとそこには「デジタル」についていけていないと感じている人(デジタルデバイド・情報格差)の存在がありました。

このような現状の中で、はたして「デジタル」は本当の意味で人々を幸福にしているのか?幸福にしているならそれはどのような環境に住む人なのか?この疑問を明らかにするべく、デジタルわかる化研究所は「デジタル幸福度」の調査に乗り出しました。

デジタル幸福度とは
デジタル幸福度とは、広義の「デジタル」との関わり方による生活の主観的な変化を調べ、デジタルがどのように幸福感へ寄与しているのかを示すデジタルわかる化研究所独自の調査です。調査は事前調査と本調査の全2回の行程で実施。事前調査では無作為に抽出した340名を対象としたアンケートを実施し、「『デジタル』のおかげで幸福に感じる場面」もしくは「『デジタル』のせいで不幸に感じる場面」の幸福度を自由回答を集計しました。

K J法を用いた集計の末、デジタルが幸福感・不幸感に寄与する因子として「便利さ・快適さ」「楽しく過ごせる時間」「良好な人間関係」「経済的なメリット」「賢さ」の五つがあると仮説立てました。本調査では5因子それぞれを五段階評価で集計することで、グラデーションを持った幸福度の可視化に取り組みました。

調査概要は以下の通り。

1. 調査対象者 全国47都道府県から甲子園球場に来場している人物
2. n数=1113
3. 調査時期 2023年8月7日〜13日
4. 調査場所 兵庫県西宮市 阪神甲子園球場前
5. デジタルに慣れない人の声を聴取するために対面形式にて実施

今回の調査で特筆すべき点として聴取形式と聴取場所が挙げられます。聴取形式の特徴は「対面形式での調査」という点です。

これはWEB調査では可視化できない、P C・スマホの扱いに慣れていない人を含めた総合的な意見を汲むためです。この聴取形式にすることで幅広いデジタル習熟度の幸福度を調べられたことはもちろん、
回答者の生声を合わせて聞くことができるという副次的な効果もありました。この回答者の生声については後編にてご紹介いたします。

また、集聴取場所には兵庫県西宮市の阪神甲子園球場前を選択しました。これは「すべての都道府県の人が一堂に会す場所」という条件に加え、「デジタルに対する習熟度を問わずに人が集まる場所」という先の聴取形式につながる条件を満たす場所であることから選定しました。

この聴取形式と聴取場所によって、これまでの先行調査で取りこぼしてしまっていたデジタルに慣れ親しんでいない層や、WEB調査で抜け落ちてしまいがちな10代以下・70代以上の意見の聴取を実現することに、今回の調査の新奇性を見出しています。

結果
調査の結果、次のような結果が得られました。

・デジタル幸福度総合ランキング1位は徳島県。続いて2位山梨県、3位宮崎県。
・「楽しく過ごせる時間が増えた」「お得に感じることが増えた」の項目を高く評価している都道府県ほど、総合ランキングでも高い順位を記録している。

下記にて全項目の都道府県別ランキングをご紹介します。

次の章にて注目トピックをご紹介します。

注目トピック
各種因子での都道府県平均点数とをもとに箱ひげ図とヒストグラムを作成すると、次のような結果が得られました。以下にてここから得られた気づきについて、2点ご紹介します。

■トピック 1 (地域格差)5因子のうち、「便利」に最も地域格差が。
5因子について、都道府県間の単純な分散を抽出したところ、「便利」の因子が最も高い分散が得られました。(箱ひげ図からもわかるように、この結果には外れ値が含まれています。ただ、今回比較している個体が「都道府県」であることから、外れ値をあえて排除せずに検証しています。)このことから、デジタルによって生活が便利になる幸福度合いは、地域差が大きく影響しているのではないかと考えられます。

確かにデジタルがもたらす便利さには地域によらないものが多いあります。一方で、決済サービスでの店舗対応や基地局の対応域のような前提としてのインフラが各地域単位に備わっている必要があるものが一定数存在します。各種デジタルサービスの普及度と合わせて比較することで、新たな課題に気づく一助となるやもしれません。一方で「楽しく過ごせる時間」は最も分散が小さく、地域差による影響があまりないことがうかがえます。詳細はヒストグラムを参照ください。

■トピック 2 (総合)5因子のうち、「賢さ」が全都道府県共通で低い結果に。
箱ひげ図からも読み取れるように、「賢さ」の因子が相対的に低いレンジを推移する結果となりました。回答者の口からは「自分で考える習慣がなくなった」などのスマホ頼りな生活に対して不満感を持つ声が散見されました。回答者の話からは自分の頭で考えること=賢いという等式が地域を問わず根付いている様子が垣間見えました。特に日本では苦労することが美徳とされる傾向があることからか、己の頭一つで考えないことで、賢さを損なっていると感じるようでした。この美徳は、もしかするとデジタルデバイドを生む原因を含んでいるのかもしれません。詳細は下記箱ひげ図をご覧ください。

近年では自分の頭では最小限のことのみを考え、あとはデジタル・機械に任せるという「機械と共存する賢さ」が台頭してきています。具体例はデジタルわかる化研究所の過去記事<教育現場のICT活用を支える内田洋行に訊く-ICT支援員の仕事とデジタルデバイドへの見解->をぜひご覧ください。機械に頼ることを「手抜き」ではなく「手間抜き」だと捉えることができれば、デジタルデバイドが解消しやすくなる土壌が整うのかもしれませんね。

終わりに
今回はデジタル幸福度調査の結果を定量的側面からまとめてきました。全体的には好意的に捉えられてるデジタルですが、その中にはそのスピードについていくことができない人がいることが量的な方法で可視化されました。ではそのような人は具体的にどのような要素に悩み・焦り・ついていけないと感じているのでしょうか?この続きは後編の回答者の生声編でご紹介します。

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