〜対面調査で得た、「デジタル」への想い〜 【続・調査レポート】デジタル幸福度についての生の声

2023.12.04 リサーチ

「デジタル」によって、人々は幸福を感じているのか?

この疑問を明らかにするべく、デジタルわかる化研究所は「デジタル幸福度」の調査を実施しました(※調査報告は前編参照、調査概要は下記の通り)。
延べ1週間で調査場所である阪神甲子園球場にて、全国47都道府県の方々(n数=1,113)に対面調査する中で、準備した各質問項目への回答以外にもネット調査では収集が困難な部分が見えてきました。

<デジタル幸福度調査とは>
デジタル幸福度とは、広義の「デジタル」との関わり方による生活の主観的な変化を調べ、デジタルがどのように幸福感へ寄与しているのかを示すデジタルわかる化研究所独自の調査です。聴取場所には兵庫県西宮市の阪神甲子園球場前を選択しました。これは「すべての都道府県の人が一堂に会す場所」という条件に加え、「デジタルに対する習熟度を問わずに人が集まる場所」ということから、聴取形式につながる条件を満たす場所であることから選定しました。

【調査概要】
1. 調査対象者 全国47都道府県から甲子園球場に来場している人物
2. n数=1,113
3. 調査時期 2023年8月7日〜13日
4. 調査場所 兵庫県西宮市 阪神甲子園球場前
5. デジタルに慣れない人の声を聴取するために対面形式にて実施

【調査項目】※全て1~5段階で回答
・デジタルによって、今まで不便だったことが便利になったと感じる
・デジタルによって、楽しいことが増えたと感じる
・デジタルによって、人間関係が良くなったと感じる
・デジタルによって、おトクなことが増えたと感じる
・デジタルによって、賢くなったと感じる

<対面調査で分かったことのサマリー>
インターネット調査は、手軽に、また短時間で「量」を確保できるので当研究所でも頻繁に利用してきましたが、今回対面調査を行ったことで集計結果だけでは表せない「生の声」に多く出会いました。次の章より、各項目に詳細についてご紹介します。

<1>アナログ未経験世代にとって、「デジタル」が分からない
<2>多くの人が立ち止まって考えた、設問とは
<3>「デジタル」を使うのか、使われるのか
<4>「デジタル幸福度」とは、何か


<1>アナログ未経験世代にとって、「デジタル」が分からない
「デジタル幸福度の調査をしています」と調査員がお声掛けすると、多くの方から「デジタルって何?」という第一声が。調査する中では最も多いリアクションでした。「例えばスマートフォンなど、、」とデジタルを分かりやすく、より身近なモノへ変換してお伝えすることでどの年代においてもその後の設問への返答はスムーズになりました。
「デジタル」という言葉が研究所の名前となっている私達にとっては当たり前の言葉。しかしその言葉の意味・捉え方は年代によって様々であるという気付きを発見できたことは、大きな収穫となりました。

また、もう1つの発見としては、10代~20代前半の世代は「アナログ」だったころを知らず、対比するものがないということです。デジタルの便利や楽しさは当たり前のものとして感じているという印象を受けました。(30代以降の方の調査時に受ける印象と大きく乖離がありました)もしスマホがなかったら、と聞いてみると「想像ができない」という答えが返ってきたのも印象的でした。みなさんは、「デジタル」と聞いて何を想像するでしょうか?!

<2>多くの人が立ち止まって考えた、設問とは
今回の調査で多くの方が立ち止まって考えていたのは「人間関係が良くなったと感じるか」という設問でした。特に、年代は問わず多くの女性が考え込んでいる姿が記憶に残っています。この項目で回答者が想像されていたデジタルとは、LINEやTwitterをはじめとしたソーシャルネットワークだったという事も印象的でした。

これまで疎遠だった人や懐かしい人と繋がれる良さもある反面、いつでもどこでも連絡が取れてしまうことはデメリットでもあります。コメント内容や返信のタイミングで他人とトラブルになった、など、人間関係に悪い影響もあったとの声が。特に、SNSについては時に著名人やアスリートの活動、人生そのものにも大きな影響を与える「デジタル」です。デジタルの発達によりたくさんの人と繋がれていることは、幸福なのか、不幸なのか。地域差はあまり出ませんでしたが、特に女性を多く悩ませた設問となってしました。


<3>「デジタル」を使うのか、使われているのか
今回、調査した5つの設問の中で最も点数が低かったのが「デジタルによって、賢くなったと感じる」という設問でした。60代以上の方は総合点数が低く、むしろ頭悪くなったという人も見受けられました。一例としては、漢字が思い出せなくなってきているというものです。すぐ調べて答えを見つけようとし自分で考えなくなったこと・メールやLINEなどでのやりとりが増え直筆で書く機会が減ったことで、いざという時に思いだせないようでした。
          
一方、若年層では「スタディサプリ」をはじめとした学習系サービスの使用経験から、比較的肯定的な回答が多く見受けられました。とはいえ、なんでもデジタル頼ってしまって自身が考える力が劣化しているように感じる、という意見もありました。

全体的には否定的な意見が多く、「デジタル」を使い知識を得た反面、「デジタル」に使われて自身で考える事が少なくなったことが低スコアの原因と思われます。便利がゆえに依存しすぎるという問題点について、今後の研究材料の1つとしていきたいと思いました。

<4>デジタル幸福度とは、何か?
今回の調査で、「便利になった」(平均:4.03)、「楽しい事が増えた」(平均:4.08)など、ポジティブなスコアもあった一方で、「人間関係が良くなった」(平均:3.22)、「賢くなった」(平均:3.14)など、相対的に低いスコアも見られました。デジタル化によって便利になり楽しみが増えた反面、アナログ時代には見られなかった「距離感の難しさ」・「煩わしさ」・「知らなければよかった他人の意見」など人間関係に苦しむ原因も生まれているようです。

デジタルという存在はすでに私たちの身の回りに深く関わり常にアップデートを続けています。幸福を感じる為には、デジタル化によって得た情報や知識などを人と人、社会の中でどのように活かしていけるのかを考え、アップデートし続けることが必要だと思いました。

<終わりに>
後編では、調査で得られた「生の声」から「デジタル幸福度」の実態をまとめました。
デジタルが生活の側にあることで「便利に感じていること」に地域差はないものの、全体的な幸福度については都道府県のみならず年代や性別によって差が生まれているようです。今回の調査を続けていくことでもう少し見えてくるものがあるように感じました。次回の調査もお楽しみにしてください。

デジタルわかる化研究所
原 隆太

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