根性だけでは勝てない データで強くなる令和の野球

2023.10.11 インタビュー

野球の指導と聞くと、あなたはどのようなイメージを持つだろうか?大リーグボール養成ギプスに代表されるような根性論だろうか?徹底した礼儀を重んじる縦社会だろうか?もしあなたがそのようなイメージを持っているとしたら、今回紹介する令和の練習方法に驚くことだろう。今回は野球にまつわるデータ計測機器を展開するRapsodo Japanでマーケティング・広報を担当されている花城さんにインタビューさせていただいた。

 

ラプソードとは

▶︎まずラプソードについて教えていただけますか?
弊社はラプソード日本法人として日本での導入支援に取り組んでいます。本社はシンガポールにあるのですが、創業者はトルコ人です。彼はゴルフが好きで、個人で買えるゴルフ用シミュレーターを作ろうとしたところからスタートした会社になります。

ですから初めはゴルフ用の計測機器を開発していました。それをアメリカに持ち込んで販売していたのですが、その中でちょうど「ゴルフでできるなら野球でもできるのでないか」という話になりました。ちょうどその時にメジャーの球団でもStatCastと呼ばれる試合中のトラッキングデータの計測が始まった時期でした。そこで、その流れに乗って野球練習用の計測機器を作ることになりました。

▶︎日本での普及状況はどれぐらいでしょうか?
プロの世界ではメジャーに関しては全球団に導入されています。日本の球団に関しても、12球団中10球団に導入されています。現在、球界には多様な計測機器があります。弊社以外の製品も含めれば全球団データを活用しているという状況です。

▶︎個人でも機械をお持ちの選手もいるのでしょうか?
個人で持っている選手は日本だとそこまで多くないです。ただ、ダルビッシュ投手がはしりとなって、YouTubeの動画で使用シーンを公開したことから、今は個人で所有する日本のプロピッチャーの間でも増えつつあります。

 

意外なユーザーと野球カルチャーの変化

▶︎一線級で戦おうとすると、標準装備になってるような流れなのでしょうか?
そうですね。やはり感覚だけでやっていくというのは難しいです。特にピッチャーに関しては「バッターに当てられないようにするためにどう変化球を曲げればいいのか」を、今までは経験や勘で、あるいはコーチから指導されたものをそのまま受け継いでいました。それに対して、今はもう明確に数字で答えが出て、見える化しています。「伸びるボール」をホップ成分や変化量が〇〇センチ以上と定義して、変化球に関しても横の変化量などで定義できてしまいます。

▶︎面白いですね。3次元の座標で魔球を定義しているのですね。
そうです。ラプソード製品ではこれができるので、ダルビッシュ投手が目をつけて、自分で握りを試行錯誤していく中で、思うような曲げ方ができる握りを試しています。今はまだまだですが、日本のアマチュア球界はこれから少しずつこのように変わっていくと思います。

▶︎その中で高校野球ではどれくらい普及しているのでしょうか?
高校野球は、今日本に約3,800校ある中の、大体120校くらいです。

▶︎その120校というのは、いわゆる強豪校なのですよね?
よく言われるんですけど、実はそうではないんです。もちろん強豪校も入ってますけど、多くは進学校やデータリテラシーが高い高校です。勉強ができる子たちや、野球も勉強も両方文武両道できるような高校の方が多いです。

データの類が好きな先生がいる学校は必然的に進学校など勉強ができる子たちのいる学校が多いです。そういった理由から強豪校よりは中堅校・進学校にじわじわと浸透しています。

▶︎解析をしているのは先生というよりかは生徒本人なのでしょうか?
両方あります。指導者が数値を見ながらアドバイスすることも、選手たちが自身でデータを見ながらもっとこうしたい、ああしたいと取り組むこともあります。今までは「やれ」と言われたことをやる。指導されることが絶対で、それに何の疑問を持たず取り組むのが、従来の野球カルチャーだったと思うのですが、今はもう選手第一に変わってきています。

この仕事やっていて本当に面白いなと思うことは、選手が自身のデータが出た時に、前のめりになって話聞いてくれることや、数値の見方を理解してすぐに「こう投げてみよう」「こう変えてみよう」と自分で気づいて改善していることです。今までの「やれと言われたものをやる」「ただ数をこなす」世界から、自分で考えて「こうしたらいい」と自分で気づけるようになるというのが一番大きいのかなと思います。

 

今が潮目。導入する高校としない高校の格差とは

▶︎今後「ラプソード型」の選手を追いかけていくと面白い結果が起こりそうですね。
ただでさえ甲子園に進学校が勝ち進むと、それだけで騒ぎになっていますし。

今後はそういった広がりも必要になってくると思っています。これまで弊社に問い合わせされる方々は、比較的データが好きとか、新しいものが好きでやってみたいという人たちでした。ただ、このような方々の母数はどうしても少ないと感じています。今後さらにデータ活用の文化を広めていくためには、「ラプソードは知ってるけどどうやって使えばいいか分からない」「新しいものに抵抗がある」といった人たちに対してどうアプローチするか。ここを考えて行かねばと思っています。

今は教育現場が基本的にはターゲットです。教育のDXを国として推進していると思いますし、デジタル庁の登場もその流れかと思います。その流れに弊社も乗って一緒にできることがあればいいかなとは思っています。

▶︎象徴的なチームが勝ち上がっていく様子が見られるとわかりやすいですね。どうしてあの学校は強くなったのかと注目されますし。それこそ少し前の青学の駅伝チームのイメージですね。
そうです。全国のバッティングセンターにも導入が進んでいって、打つだけでなくて分析できるようになるなど、身近に感じられるようになれば見られ方も全然変わりますよね。

▶︎お話を聞いている限りでは、教育DXの格差は、指導者の方が従来志向の方が多いから、あるいは「機械なんかに負けてたまるか」といったところがあるのではと感じられます。この辺りはどうお考えですか?
おそらく「これまでの指導の中にないもの」と捉えられてることが挙げられるかなと思います。強豪校に限らず、これまで指導者の方が培ってきた経験の中にはデータ活用は無かった考え方です。プロで使われている良いものだと分かっていただいたとしても、自分でこれが使えるか、使うかという自分ごとの視点にはなっていないのではないかと考えています。

ただ、実際に計測機器を使っている指導者の方やチームの方を見ると、計測機器は指導の延長にあるものだと感じます。あくまで機器はツールでしかない。それこそピッチングマシンなどと同じ練習機器の一つです。巧みにデータを見ながら試行錯誤するダルビッシュ投手の様でなくとも、1球ごとに出てくるデータで指導の裏付けとして使ったり、選手のモチベーションアップにも貢献するという側面にも気がついてもらえたらと思います。

▶︎指導の裏付けや選手のモチベーションですか?
指導の裏付けでいうと、たとえばピッチャーの指導をする時に、ただ言葉だけで伝えるだけではなくて数値があれば、指導の結果数値が上がったことで指導の説得力が増すと思います。

また、最近導入した高校のコーチによると、数字を持って説明すると今の子たちは理解が早い。というか数字を持って説明しないと納得せずモチベーションを保てないそうです。

これは進学校だけでなく、甲子園に何回も出ている強豪校でも同じような現象が起きています。今の子たちはただ頭ごなしに「こうやれ」「ああやれ」という指導だと全然理解してくれませんが、データで見せながら指導すると分かってくれるそうです。単純にデータの使い方を熟知してなくとも、今までの指導でやってきたことを感覚でなく数値で見せられる。そういう使い方をしてる所も多いので、必ずしもデータに精通していなくても活用できるという点は、今後我々としても広めていきたいところだと思っています。

 

予算獲得のために必要な解説者

▶︎導入で高校野球の予算管理者、決済者は監督なのでしょうか?
基本的には監督ですが、部費のみで購入頂くことは基本的には難しいように思います。そのため、多くの学校ではOB会や保護者と連携して寄付を募って、購入費を集めるケースが多いです。

指導者や選手には機器の良いところ、データを使うことの価値が伝わっていても、OB会や保護者の理解を得ることがまだまだ難しい現状があります。

例えばバッティングマシーンは1台120万円ほどするのですが機能が分かりやすく、殆どのチームで導入されています。一方、ボールの回転数データや打球速度データが何に結びつくのかはいまいちわかりづらい。その辺りの理解をもう少し高める努力をしないといけないのかなと思っています。

▶︎テレビの野球中継などで瞬時に解析してデータ活用のイメージを届けることはできないのでしょうか?
回転数などは既にプロ野球の世界で表示されはじめています。解説者の方も回転数の高さやメジャーリーグのピッチャーとの比較はされていると思います。ただ、回転数が高いから打たれにくくなるかと言うとそういうわけではありません。

球速とは異なり、回転数が高いだけで打者を抑えられるわけではありません。そういった解説の仕方は難しいのですが、その辺りまで理解して説明できる方は本当に限られています。

▶︎決済者の方に納得していただくためには、データの話ができる人、かつ野球の話ができる人が説明しないといけないのですね。

 

新たなベンチメンバー「高校生アナリスト」の登場

最近では東京六大学を中心に「学生アナリスト」が登場しはじめています。ラプソードをはじめとした計測機器を扱う専門の人間がいて、彼らがデータを分析して選手に対してフィードバックする役割をはたします。高校野球でもこの流れが現れはじめています。

イチローの母校で知られる愛工大名電高校ではラプソード商品を導入して頂いています。監督の倉野さんはテクノロジーが大好きな方で、データ解析にもっとも積極的に取り組んでいる高校の一つだと思います。面白いことに、そこでは選手ではないですがデータに興味ある高校生をアナリストとしてチームに入れる活動をしています。彼らが学生アナリストとしてラプソードのデータを分析して、愛工大名電に入るような野球のエリートたちに対してフィードバックしています。

先ほどのお話にあった進学校の甲子園出場のように、アナリストのいる高校が甲子園で優勝する様になれば野球へのデータ活用の流れはドッと広まっていくと思っています。

▶︎東京六大学野球で東大が一位になる未来も近そうですね。
そうですね。東京六大学野球も最近すごく差が縮まってきていると感じます。今はもう東大が勝つことはあまり珍しくなくなってきています。他にもラプソードを導入している京都大学も最近は活躍の機会が増えています。そういったトップレベルに頭のいい学校が導入してレベルアップしていく流れは全国的に見られているなと感じています。

▶︎学力と野球の強さがリンクするようになっているんですね。他にも面白いデータ活用をしている高校はありますか?
高校だと同じようなアナリストがいるところで東京の工学院大附属高校があります。この高校のアナリストは、彼自ら校長先生・理事長先生へのプレゼンという形でチームへの機器導入を直談判し、結果導入に至りました。今ではそのデータを活用してチームの強化につなげています。

先ほどの話に少し戻りますが、ただ上手くなるだけ、チームが良くなるだけではなく、キャリアにも繋がるデータ教育という側面も野球×データの世界にはあるかと思います。どんな仕事をしても数字を使う機会は出てきます。高校生の段階でデータを集めて分析し、フィードバックして良くしていくプロセスを学べることは、それだけでも十分に価値があることだと思います。さらにそこからアナリストという仕事があることへの気づきなど、キャリアを選択していく上で参考にもなれば、それは保護者の方にも響くのではないかと思っています。

▶︎「10番目の野手」という活躍の場が生まれているのですね。

 

データはあくまでツールでしかない

▶︎今のプロ選手が高校球児だった時代はデータ活用をされてこなかったかと思います。いざ新しく導入された時に、拒絶反応や怖さを感じられてはいませんでしたか?
怖さはあると思います。どのレベルに行ってもそうですが、プロ野球選手は感覚が研ぎ澄まされている人たちなので、それだけで成功する人もたくさんいます。データはツールでしかないので、使ってもいいですし、使わなくてもそれで成功するならそれでいいと思っています。一番良くないのは「こういう数字を出しなさい」というようなデータの押し付けだと思っています。選手しかり指導者しかりですが、あくまでデータはツールでしかないのでそれをどう生かすかは選手次第であるべきだと考えています。

活躍してる選手でも全くデータを見ない選手はたくさんいます。むしろプロの選手でデータに関心を持ってデータ活用に取り組もうと思ってる人たちは、トッププロの人たち以外ですと、戦力外通告間近な選手というケースもあります。何かやらないと、という模索の中でデータ活用にたどり着く様です。ただデータをどう活用するかは選手に委ねられています。うまく使ってもらえばいいなと思ってますね。

 

今後に向けて

▶︎ラプソードはもともとゴルフ用機器というお話もありましたが、他の競技に進出していく予定はありますか?
今ですと野球とソフトボール、ゴルフ向けの計測機器を取り扱っています。仕組みを説明させていただくと、カメラでボールを捉え、カメラから得た映像でボールの縫い目でどれだけ回転しているかや、回転軸を測っています。

▶︎ハイスピードカメラみたいなものですね。
そうです。カメラで捉えた映像を内蔵されたコンピューターで解析し、回転数や回転効率などのデータを計算して出していきます。要はカメラでボールの回転が分かればどのスポーツにも応用できます。

直近で商品開発を進めているスポーツはクリケットです。野球と非常に近いスポーツですし、インドやイギリスをはじめとした地域で市場が広いのでビジネスチャンスだと考えています。

▶︎集められたデータはどのように扱われているのでしょうか?
データはラプソードのクラウドに溜まっていきます。計測が終わった後に計測データをクラウドに全部上げていきます。そうするとデータや動画を監督や指導者はもちろん、選手自身も自分のデータや動画を手持ちのiPhoneで確認することができます。

▶︎ある程度選手のデータが集まれば育て方のパターン分けなども作れそうですね。

そうですね。たとえばこの画面を見てください。これはある選手の、投球の球速や変化量の平均値を記録したものです。右上の変化量の平均値のグラフは、重力だけで変化した時(ナックルボールなど回転によって変化しない球種)を原点にプロットする時にどれだけ各球種が変化しているのかを表しています。これを基準に表現すると、ストレートはおよそ20CMシュートして40CMホップする球種と定義できる様になります。

大事なことは平均からどう外れるかです。平均的なボールが一番打たれるので、そこからどう外れるかを考える必要があります。この赤い点がストレートで、今赤い点が比較的平均に近い球となっているとわかります。「もっとホップさせるようにしよう」といった指導ができる様になります。

また、対角にある緑の点がスライダーとカーブなのですが、スライダーとカーブが結構近いところにあることがわかります。本人はスライダーとカーブを投げ分けているつもりですが、バッターからすると似たような変化をしていると言うことができます。

ピッチャーはストレート・カーブ・スライダー・チェンジアップの4球種を投げているつもりですが、ストレートとチェンジアップはほぼ同じ変化で、カーブとスライダーもほぼ同じ変化となると、バッターからすると早い系と曲がる系2つしかないことになります。そうなるとバッターも狙い球を絞りやすいので、「スライダーをもっと横に曲げよう」であったり、」チェンジアップはもっと落とそう」などと指導し、変化領域の面積を広げていく。文字通り変化に幅を持たせることができる様になります。

あるいはこの投手は変化量の分布が斜めに並んでいますがサイドスローの投手などは横に並ぶようになります。そうすると今度は、投手陣の中で速いボールが投げられる投手、縦の変化がある投手、横に幅がある投手と、いろんなタイプの投手を揃えることが、これまで以上に精緻にできる様になります。

従来は単純に投手の利き腕やどこから投げるかだけで判断していたものを、ボールの変化量から決められるので、タイプ別にどう育てるかも可能ですし、逆にタイプの違うピッチャーを育成するということができる様になります。

▶︎リリーフの選び方も変わってきますね。
そうです。たとえばスタミナに関しても100球投げ込みした時に、何球目から球速や回転数が落ちるかが分かっていると、替え時が練習段階からある程度目安が立てられる様になります。

▶︎同じ考え方を使えば1試合の中だけでなく、中4日・5日の疲労感も見える化できる様になりますね。
「疲れてる」具合は人によって違うはずなんですよね。ただ、「大丈夫か?」と聞いたら皆「大丈夫だ」と答えます。本当に大丈夫かどうかはデータでないと実は見えません。

特に高校野球では試合に出たいので、怪我をしても言えないという問題がどうしてもあると思います。定期的に計測しておけば、普段との球速の違いや回転数の違いからどこか怪我しているのか、あるいはフォームをどこか変えたのかという気づきに繋げられます。もしかしたら選手自身も気づいていないかもしれない違和感が、数値を見ればそれが分かってしまう様になります。

▶︎選手生命も伸びそうですね

 

データ活用への反対意見

▶︎お話を聞く限り見える化してみんな幸せになると感じますが、一方で導入への反対意見は出てはいないのでしょうか?「スポーツはそもそもそういうものではない」という声であったり、機械に支配されていく可能性というものはどのようにお考えですか?
ずっと機器を使っている選手から聞くこととして、「自分の感覚よりもデータを信用してしまった」や「数字を上げることにフォーカスしてしまって、それが目的になってしまう」という声があります。最終的な目標はバッターを抑えること、試合に勝つことです。そのためのツールとして提供する姿勢でいるので、そこは間違えないようにしないといけないということは我々の方からも説明するときには伝えるようにしています。データの使い方はこれから課題になってくるのかなと考えています。

 

データを活用した広がり

▶︎野球中継の仕方もデータを機に変わっていきそうですね。
そうですね。日本でも東京ドームや横浜スタジアムではホームランの打球速度が表示されるようになってきていますし、そういった流れは少しずつ始まってきていると感じています。また数字の見方がわからなくても、実際に計測する機会が増えることで親しみが出てくるのかなと思います。

▶︎これまで野球に親近感のなかった人たちにも楽しんでもらいたいですね。
実際にやってみると、自分のパフォーマンスがデータで出てくることは本当に面白いと気づきます。そこからどうしようという工夫に繋がってくるので、選手たちは練習を楽しんでいるなという印象です。自分の投球がデータとなって出てくるワクワク感や楽しいという感情が大事かなと思います。

▶︎エンターテイメントとしてもっと普及していくと必然的に単価は下がりますよね。
7月には現行商品の価格改定もありましたが、会社としては継続的に取り組むべきテーマだとは思います。また、補助金などの整備が進んでくると有難いと思います。教育DXを進める上でやはり購入資金の捻出はネックになるかと思います。こういった取り組みを支援する補助金や制度があれば導入をしやすくなるかと思います。

他にも、データ活用の事例として中央大学と産学連携の取り組みをしています。ラプソードの機器を硬式野球部、ソフトボール部で使ってもらい、そのデータを授業の中で活用するものです。ゼミに参加している学生がデータを分析して、それをチームにアウトプットしています。同じような取り組みは他の大学でもできるのではないかなと思っています。

単純に「野球が上手くなるためのツール」としてのみならず、教育現場においては「データ活用を学ぶツール」の一つとしても有効だということは、今後も積極的に発信していきたいですね。

 

編集考察

どんな分野であれ、データ収集をすれば「見える化」とそこから生まれる「分析・フィードバック」の2つが得られる。データはこれまで見えていなかった暗闇を進むための「松明」のような役割を果たす。一方、こと野球に関しては、データは暗闇自体を無くしてしまうほどの地殻変動を起こす「噴火」になり得るのかもしれない。

今回の取材を通して一番印象に残ったことは、ラプソード機器によるデータ収集は単に練習の質を上げる機械に留まらないということだ。進学校をプロレベルのスポーツ校に。押し付けられる指導を試行錯誤の習慣に。頭の良い子を影のエースに。これまで切り離されていた領域同士に新たな役割を与えて繋ぎ直す。そんな未来を作る力がラプソード機器によるデータ活用にあるのではないかと妄想を掻き立てられた。

ではそんな未来はどの程度現実になっているのだろうか。我々はインタビューの中で登場した愛工大名電の監督へとお話を伺うことに決めた。早い時期からラプソードを導入し、学生アナリストによる分析が行われている当校。そこではどのような令和野球が行われているのか。その興味深いインタビューはコチラから。

取材・撮影
株式会社分室西村 西村康朗
デジタルわかる化研究所 清水出帆
取材実施日2023年6月9日

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