「matoca | マトカ」使いやすさを追求して待ち時間をデザイン
待ち時間解消サービスが数多くある中で。
昔と今では飲食店での入店までの待ち時間の考え方は大きく変わっている。昔はとりあえず並んで待つ、名簿に名前を書いて呼ばれるまで近くで待つ、これが一般的であった。今はデジタルを駆使した様々なサービスがあり、違う場所にいてもアプリで残りの組数が把握することもできる。ただ群雄割拠な待ち時間解消サービスはどれもが、わかりやすく使いやすいものとは限らない。そんな中で使いやすさを追求したサービスが「matoca」である。もはや誰しもが使うLINEで簡単に順番待ちをすることができる。
その「matoca」の開発の背景や、ここまで店舗に導入されるようになった経緯など「matoca」を運営する株式会社ブレイブテクノロジーの代表取締役社長の磯本様にお話を伺った。
語り手:株式会社ブレイブテクノロジー 代表取締役 磯本様
聞き手:デジタルわかる化研究所 柴 圭佑
「matoca」とは
誰でもカンタンに5秒で発券をコンセプトにした行列対策に優れた整理券システム。日本で1番DLされているアプリLINEに呼出通知を送れる整理券システム「matoca」は、「登録操作はめんどくさい」というお客様と「待ち時間を有意義に使って欲しい」という店舗様の想いを解決。
――どうやってこの「matoca」が誕生したかを教えてください。
スマートフォンアプリの開発会社を2011年に創業したところから始まります。当初はアプリの受託開発を行っていたのですが、ずっと「いつか自分のサービスを世に出したい!」という思いを抱えていました。そんな中、2016年の春ごろにLINEがAPIを外部公開して様々なサードパーティーのアプリと連動できるようになり、これをどうにか活用できないかと考えたのが一つのきっかけでした。
もう一つのきっかけは、近所にある焼肉屋から、「行列がすごいので、順番が来たら呼び出せるようなアプリを作れないか?」と相談がきたことでした。アプリを作るのは良いが、その焼肉屋でしか使えないアプリだと、なかかなインストールされないものです。そのときLINEのAPIのことを思い出して、LINEで呼び出す仕組みを作らないか?と提案したのが「matoca」のはじまりですね。そこから開発を進めて、2017年にLINEで順番待ちができるようになったと世の中に発信をしました。
――やはりアプリはDLする障壁がありますよね。その分LINEは既にDLしている方がほとんどだからハードルが低いと。
そうですね。今でも多いですけど、アプリを入れると、とりあえず名前を入れてメールアドレスを入れて、生年月日…みたいに続くので、そこで頓挫してしまう人も多い。ただLINEなら友だち追加するだけでOKということが可能です。
――リリース後、焼肉屋での導入はされたんですか?
結果的にその焼肉屋ではすぐに導入ができなかったんです。理由は、まだLINEで呼び出すなんてサービスがなかったので、信じてもらえなかったことです。せっかく食べたくて並んでいるお客さんに、通知が届かず順番を抜かされたらショックだろうというお客さんのことを考えた上での判断だったんだと思います。
結果、最初に導入いただいたのはコメダ珈琲店さんなんです。
コメダ珈琲店さんからは、いい仕組みと思っていただき、導入にすることになりました。そこからはコメダ珈琲店さんが導入していることを理由に、他の飲食店さんも続いていく形で多くの店舗に導入いただけることになりました。
――コメダ珈琲店さんの影響は大きかったでしょうね。加えてここまで「matoca」が伸びたのはやはりLINEというのがポイントですか?
そうですね。LINEを活用することによってお客さん側もアプリDLの手間がないのでハードルが低いということもあるのですが、店舗側にもメリットがあるのがポイントですね。お客さんが「matoca」を使うと、その店舗のLINE公式アカウントの友だちになる仕組みにしています。つまり、整理券を配布するだけでLINEの友だちが増えるというメリットがあるので、そこが大きいと思います。
――確かに飲食店オリジナルのアプリを作るケースもありますが、なかなかハードルが高い。それに比べて「matoca」は待ち時間解消に加えてLINE公式アカウントの友だちを獲得できる…メリットですね。
デジタルわかる化研究所が言うデジタル若葉さん*は、お客さんだけではなく、店舗側にも当てはまると思っています。お客さん側の画面や操作感はわかりやすくできているのに、店舗スタッフの操作方法がわからなかったり、せっかくLINE公式アカウントを開設したのに、どうやって友だちを増やしていいかわからない、そういった店舗の方々もデジタル若葉さんだと考えています。LINE公式アカウントの友だちを増やせば、クーポンを配ったりできるけど、そもそも友だちをどうやって増やすのか分からない。そういった店舗に「matoca」を導入したら友だちを増やせますよという説明をして、それがわかりやすくて浸透のきっかけになったと思います。
*当研究所は「情報弱者」と呼ばれている人たちのことを弱者としてではなく、これからの可能性を秘めた人として「デジタル若葉さん」と呼んでいます。
――現代は業界に特化した待ち時間アプリなどいろんなサービスが出てきていますが、「matoca」は今後もお客様と飲食店も恩恵を受けられるようなスタンスで、今後もやり続けられていくようなイメージでしょうか?
そうですね。やっぱり使いやすさの追求に、すごく力を入れています。会社自体のミッションとしては、待ち時間をデザインする、時をデザインするというキャッチフレーズを掲げていて、待ち時間に特化したサービス展開をしていきたいと考えています。例えば、「matoca」は飲食店によく使っていただいているので、同じ飲食業界でのサービスとしてモバイルオーダーも開発しないんですか?と聞かれるんですが、我々は順番を快適に待っていただくというコンセプトをぶらさないようにしたいと思っています。もう一つは「使いやすさの追求」ですね。
――やはり使いやすさがポイントになってくるのですか?
そうですね。ずっと使いやすさを念頭に置いてアプリを開発してきたのでしみついていますね。「同じ操作ならワンタップでも減らそう」という感じです。「matoca」を操作する店舗スタッフの中にはデジタル若葉さんが多くいると考え、一目でどのボタンを押せば呼び出しができるか、保留できるかなど、わかりやすさにこだわって設計にしています。その結果、分かりやすいとお声いただくことが多いです。
――確かにお客さんの方に目いきがちですけども、いざ操作するのは従業員の方というのも多いですね。
そうなんです。店舗スタッフにはタブレットを使ったことがない方もいると思うんです。そういう方に「これをスワイプして」と説明しても理解することは難しい。業務用アプリは、つい機能をてんこ盛りにして、画面が複雑になってしまうことがあります。アプリを提供する側は、マニュアルや FAQ を充実させればいいんじゃないかと思いがちです。でも「matoca」は、混雑している店舗や施設ほど導入してくださっているので、今100人並んでいますみたいな時に、マニュアルなんて開けないですよね。だからやっぱり徹底的に従業員の方が使う画面もやっぱりわかりやすくしたい。その気持ちが強いです。
――従業員の方のことも親身に考えられてるのですね導入されている飲食店さんからの声を参考にされるケースはありますか?
参考にさせていただくケースが多いです。カスタマーサポートに来る問い合わせで良くあるのが、「matoca」の設定を一部変更したいという要望です。多くの場合は設定の変更方法を教えて終了ですが、我々は「この問い合わせがあるということは、設定変更の方法がわからなかったという課題がある」と捉えて、もっとわかりやすさ、使いやすさを追求するためのヒントにしています。
――今後の「matoca」の展開を教えてください。
ここまで飲食業界中心にサービスを展開してきており、小売店など別業界にも活用いただいてきました。その中から今後広げていきたい一つが物流です。トラックの順番待ちが社会問題になっています。倉庫や工場付近に、作業を待つトラックが何台も待機していて、交通渋滞の原因になっている問題と、待機時間がドライバーの長時間労働になっているという問題です。その解決のために順番待ちのシステムが力に慣れるのではと考えています。
二つ目が医療分野です。コロナ禍をきっかけにクリニックや調剤薬局から待合室の混雑解消の相談が多くなってきました。そこで新会社を立ち上げて、医療分野に特化した順番待ちサービスを展開していこうと動きはじめました。
――待ち時間をデザインするという根底はブレずに、広げていくイメージですね。
「待ち時間をデザインする」をベースに、業界を広げてるいう感じです。ここまでLINE活用を長くやってきたので、その知見を活かしていろんな分野に力を入れてやっていこうと思っています。
「matoca」:https://junbanmachi.jp/
ブレイブテクノロジー:https://bravetechnology.co.jp/
待ち時間解消サービスは、お客さんが使いやすい=一番良いサービスと、この取材を行うまでは考えていた自分がいる。ただお二人の話を聞いてその考えだけでは誤りだと痛感した。もちろん並ぶために使うお客さんのことは考えることは大事である。ただお客さんだけではなく、操作をする従業員さんも考える必要がある。「matoca」はお客さんと従業員両方に対しての使いやすさを追求したサービスだ。LINEだから使いやすい、それだけではない。デジタルの苦手な従業員の方でも一目で見てわかりやすい、それが「matoca」。今後も飲食だけではなく様々な領域で待ち時間をデザインすべく、使いやすさを追求していく。
ライター:デジタルわかる化研究所 柴
【ライタープロフィール】
〇柴圭佑:2020年にオリコムに入社。入社以来5年間営業部門。2022年に当研究所に参画。人見知りをしない性格。趣味は野球観戦(応援)。特技は口を大きく開けること。