ペン型デバイスで格差をなくす「L I G H T W I Z」が目指す未来とは?

2023.12.13 インタビュー

デジタルデバイド(情報格差)を解消を考える中で、「デバイスの使い方がわからない」という問題は必ずと言っていいほど登場する。これまでデジタルわかる化研究所では様々な立場からこの問題に立ち向かう方々を取材してきた。ただ一方で、このような問題をそもそも発生させないようにはできないだろうか?今回はペンをデジタルデバイスにすることで、新たなデジタルとの接点を開発するLIGHTWIZ志藤創一朗さんにお話を伺った。

 

発想はアナログ→デジタルへの手間から

▶︎本日はお時間をいただきありがとうございます。まずは取り組まれている活動について、その概要を教えてください。
私は大学院での研究とは独立した試みとして、ペンを拡張した情報入出力デバイスであるLIGHTWIZのハードウェア、ソフトウェアの開発を行っています。ペンの使用感はそのままに、それを通じてデジタル機器の操作を可能とするプロダクトです。

▶︎どうしてこのようなプロジェクトを始めようと思ったのですか? 
私はアナログな道具、特にペンを愛用しています。ミーティングのメモには野帳を、ブレーンストーミングには紙のノートを頻繁に使用しています。しかし、研究や仕事では共有性の高さからPCを選択せざるを得ません。野帳のメモも、ブレストのメモも、最終的にはGoogle Documentにまとめてデータ化します。

OCRという写真から文字情報を書き起こす便利な技術が存在していて私もよく利用しています。ただ、後になってカメラで撮影し、文字を任意のファイルにコピペする手間が存在していることに変わりありません。もっといい方法があるのかもしれませんが(笑)。

▶︎確かに紙媒体からデジタルへの移管は面倒ですよね。
アナログを好みながらもデジタルツールを利用せざるを得ない状況や、アナログ情報をデジタルに変換する手間が私にとってはストレスです。こうしたギャップを感じる人が他にもいるのではないのか?と思いこのプロジェクトを始めました。

▶︎具体的にどのようなことから取り組まれたのでしょうか?
まずは同じ意見を持つ方が他にもいるかを把握するため、周囲の方へのヒアリングや公開されているアンケート結果、調査情報を基に、「ペンと紙を使いたいと考えているが、デジタル化社会に順応している人が一定数いる」という仮説を立てました。

そうした現状に対して、前述のようなギャップを埋めるために、アナログな存在であるペンを使いながらでもデジタル化社会にも順応できるデジタルツールの『共有性』『拡張性』と、アナログ文具の『習得難易度の低さ』と『手軽さ』の良いとこどりのペンを作れば良いのではと考え、今の活動に至りました。この活動によって得られる状況を、筆記によって生まれるデータを活用した便利なサービスを提供するWriting as a Service(WaaS)と呼びたいと思っています。

 

LIGHTWIZが作り出す未来とは?

▶︎この活動が、社会や市民にどのような影響をもたらすと考えていますか?
このペンを拡張したデバイス、LIGHTWIZを用いれば、テクノロジーが引き起こす格差(例: デジタルデバイド、ニューロデバイド)を緩和し、新しい技術に追いつくことが苦手な層でも、シンプルなインターフェースである”ペン”を通じて、便利で中毒性のあるサービスを享受できる未来を構築できると私は信じています。(ニューロデバイドとは私が名付けた、BrainMachineInterface時代で生まれる格差のことです)

格差について私の考えですが、現存するデジタルデバイド(情報格差)は、道具(広義で)の使い方を知らないために、使いこなせる人との差が生まれてしまう状況のことを指すと考えています。たとえばe-mailを使えるか使えないか、つまり郵便のみ利用可能であるかではその伝達にかかる時間に顕著な差が生まれてしまいます。プライベートならこれも問題ないかもしれませんが仕事ならこれは大きなパフォーマンスの差になると思います。

これに似た状況で業務効率に差が生まれてしまう事例もあるでしょう。また効率のみならず、ITリテラシーが比較的低いことによりセキュリティに関する理解度や発想の幅が狭まってしまうなどリスクや機会損失といった問題もあると思います。

こうした構造はきっと未来にも起こりうると思います。あまりにも範囲が広くなってしまうので、ここでは情報入出力に絞ってお話ししますが、今後はSilentSpeech技術(ほとんど喋らずとも音声入力ができる技術)による入力速度の向上やHeadMountDisplayによる視覚的なVR、AR、MR,ジェスチャー解析によるコミュニケーション、生体信号を使ってコンピュータを制御するHumanMachineInterfaceやBrainMachineInterface,ジェスチャーによる非言語的な情報の言語化などワクワクする素敵な技術がたくさん社会実装されると思います。

これらの技術を全人類が共通の知識としてフルに活用する上で、技術を使いこなすのが苦手な層が存在することは、生産効率の観点から見ても放置できない問題です。言い換えれば、単に道具が使えないだけで、個々のスキルや才能が発揮できないことは、社会全体としての損失ではないでしょうか?

こうした状況に対して、習得しやすい道具であるペンでこのギャップを埋められれば、こうした問題を解決し人類の生産性向上に寄与するのではないかと思っています。

▶︎確かに、デジタルデバイドには様々な段階があることを私たちの取材の中でも感じています。中でも「デジタルによって代替された手法だから使えない」というデジタルデバイドはそもそもハード側での歩み寄りさえできればすんなりと解消できそうですね。

*特許申請中のため画像はぼかしております。

▶︎これまでの活動で印象的な出来事はありましたか?
幸いなことに、選考が進んだビジネスコンテストなどで、多くの方に私のアイデアを聞いていいただく機会を得ることができています、その際に肯定的な意見をいただくことが多く、このデバイスの可能性をその度に認識しながら活動を進めています。話を聞いてくださった方の中にはチームに入って、エンジニア兼デザイナーとして活躍してくれている方もいます。

▶︎LIGHTWIZに可能性を感じたメンバーが集まっているのですね。
その通りです。当チームは、ペンの拡張を通じて、すべての人が障壁なくデジタルサービスを利用できる世界の創造をビジョンとして掲げています。つまりはペンを入力装置として、スマホ、PCと同じようにデジタルサービスを皆様に使っていただきたいです。

▶︎今後の活動について検討していることがあれば教えてください。
詳細な部分についてはまだ開示することができないのですが、まずは高齢者向けのデバイスを開発したいと思っています。具体的には、スマホ操作が苦手な高齢者がネットスーパー、ネットショッピングの恩恵を受けられるシステムを開発しています。高齢者は、紙に欲しいものを書くだけで商品がオンラインで自動注文され、特別な技術を学ぶことなくオンラインショッピングを楽しむことができます。さらに筆跡データの収集ができるため、この解析によりヘルスケアデバイスとして活用できるのではないかと思っています。ひとまずこの一連の技術を完成させたいと思っています。

▶確かに高齢者向けのスマホ教室など、新しい技術を習得するための手法は数多く登場してきていますが、慣れ親しんだ方法でデジタルデバイドを解消する手法はまだ事例が少ないですよね。プロダクト側から歩み寄る事例がさらに増えていき、そこから新たなデータ収集の機会が増えていけば、データ発展というさらなる要素にも繋がりそうですね。
その通りです。今はまだ具体的な製品、開発についてお話しできませんが、必ずや世の中に出回る形にして見せます。今はチームの名前を覚えてくださると嬉しいです。また興味を持ってくださった方、ぜひご連絡くださると嬉しいです。よろしくお願いいたします。

 

編集考察

これまで当研究所では数々のデジタルデバイド解消に努める、企業・自治体・学校に取材してきた。それらに共通する考え方として「新しいモノをいかに身近なものとして捉えてもらうか」に重点を置いてきたように感じている。スマホを使いこなしてもらうためにスマホ教室を開く。行政サービスをデジタル化するために、まずは行政担当者にデジタル人材を増やす。デジタルを掛け合わせた授業形式を提供し、教師に使い慣れてもらう。要は技術ありきの考え方だ。

最新の技術に対して、人を教育することで技術に人を追いつかせる。ただ、今回の取材を通じて、その考え方に対して、それでいいのか?という疑問を投げかけられたと感じた。

確かに新しい技術を浸透させる上で教育は便利だ。少ない開発コストで大量の人数にアプローチできる。技術的な難しさもない。ただ一方でそこには「人間が使う」という考え方が置いてけぼりにされてはいないだろうか?

今回取材したLIGHTWIZはそんな疑問から生まれたプロダクトだと感じた。P C・スマホというデバイスが使いこなせないならば、慣れ親しんだペンでデジタルとの接点を作ればいいではないか。この発想は技術ではなく、使う人を主眼に置いた人ありきの考え方だ。この考え方に立てば、取材中に触れたような「手段がデジタルになったことで生まれるデジタルデバイド」は元来は存在しないはずである。

郵便は送れるのに、メールでは送れない。それをデジタルデバイドとしているのは他でもない、デバイスの歩み寄りが足りないからだ。I Tリテラシーが低いのではなく、受け入れ可能な間口が狭いからだとも言えるかもしれない。現在試験段階のL I G H TW I Zだが、今後実装が進んだ暁には、そもそもデジタルデバイドが発生しない社会が生まれるのではないかと、そう感じさせられた取り組みであった。

取材
デジタルわかる化研究所 清水出帆
取材実施日2023年10月7日
*こちらの取材はchatGPTによる取材・執筆サポートのもと作成されました。

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