【イベントレポート】競輪場のシニア向けに競輪アプリの存在を周知するブースを出展

2023.06.06 イベント

皆さんは競輪場に足を運んだことはあるでしょうか?熱心にレース予想をされている方々がたくさんおり、日々熱気に包まれている競輪場ですが、シニアの方々の来場が非常に目立ちます。

そんなシニア層の“レース予想のための情報源”は、新聞を始めとした紙ベースのものや、場内の予想屋さんとの対話などが多いようです。その上で自身の経験則や知見を基に場内に設置されている画面とにらめっこしているように見受けられます。すなわち、スマホやタブレットなどのデジタルデバイスから情報収集している方はほとんどいません。

一方で競輪をはじめとした公営競技では、インターネット投票が盛んになっています。そういった背景もあり、競輪アプリ各社は、どこにいても自身のデバイスから競輪を楽しめる(投票できる)サービスをユーザーに提供しています。WINTICKETもその一つです。WINTICKETは投票機能だけでなく、彼らの知見やデータを用いてレース予想まで行っており、競輪ファンから重宝されています。

そんな中、競輪場まで足を運び、スマホを使わずアナログツールで競輪を楽しんでいる方々は、『家にいながらスマホでレースを観ながら投票を楽しめる』『特に新聞などのかさばるものを用意せずとも、簡単にレースに関連する情報を収集できる』といった価値を知った時にスマホでダウンロードを試みるのか、知りたくなりました。

そこで今回、【WINTICKET様】及び【平塚競輪場様】にご協力いただき、我々デジタルわかる化研究所が事務局となって、平塚競輪場にてWINTICKETアプリダウンロード・会員登録促進ブースを出展するに至ったので、そこで見えてきた内容を記事にしたいと思います。

 

▼イベント概要
○内容
競輪場内にて、競輪アプリ「WINTICKET」のアプリダウンロード 及び 会員登録促進ブースを運営。新規登録を行う方にはアプリダウンロードから登録 (本人確認含む)までをフォロー。新規の方限定のクーポンも配布し、そのクーポンコードの入力まで行って頂く。併せて大抽選会にも参加して頂き、抽選結果に紐づいたクーポンをプレゼント。

○目的
競輪場にお越しのシニアやデジタル若葉さん(※)にWINTICKETアプリに登録してもらい、アプリを通して、競輪を楽しんでもらう。
→ アプリダウンロードや登録の過程において、どこでつまずいてしまうのかを研究所として調査・考察する。
※私たち研究所は「デジタルを苦手とする方」や「デジタルデバイド(=情報弱者)と呼ばれている方」のことを、弱者としてではなく、これからの可能性を秘めた人として「デジタル若葉さん」と呼んでいます。

○日時
2023年5月3日(水・祝)   ※第77回日本選手権競輪の開催時期

○場所
平塚競輪場(メインスタンドそば)

○宣伝方法(当日のみ)
・会場内に告知ポスターやのぼりを設置
・告知チラシやクーポンカードの配布
・ブース付近からの呼び込み

○協力
・WINTICKET様(https://www.winticket.jp/
・平塚競輪場様(https://www.shonanbank.com/

 

▼実施しての所感
競輪場にいらっしゃるシニアを中心としたデジタル若葉さんにWINTICKETアプリの紹介や登録のサポートをする中で、下記4点の傾向や特徴が見えてきました。

①スマホの所持率は高い
・競輪場内で使っていないだけで、スマホ自体の所持率は高い。
・らくらくフォンを使っている方、必然的にAndroid端末を使っている方が多い。
・ただし「スマホ、今日は持ってきてない」「置いてきた」という方も多かった。
→ シニア層にとって、スマホは常時携帯するものではない、という発見があった。

②アプリに拒否感を示さず、「使ってみたい」という意欲を持つ方もいる
・WINTICKETアプリに興味を示し、ブースにお越しいただける方が一定数いた。また「誰かに教えてもらえる環境があれば試してみたいけど、自分ひとりじゃ一生トライしようと思わなかった」という方もいた。
・アプリをダウンロードしてはいるが、「使ったことはない/使えない」という方も多い。
・登録した方が「どうやって投票するの?」と聞きに戻って来ることが度々あり、教えてくれる人がいる環境さえあれば利用意欲が高まることが伺える。
→ ≪アプリ保有未使用層≫への活用促進というのが大きな課題と言える。アプリをダウンロードしたけど使っていない方の理由(どこで挫折しているのか?)は今後更に調査していきたい。
→ 身の回りに「気軽にスマホ操作を教えてくれる人」がいる方が少ないと考えられる。

③最初から諦めてしまう人が非常に多い
・アプリに興味を示し、立ち止まる方も多数いた。ただスマホで登録が必要となると、「じゃあいいや」と言って立ち去ってしまう方も多かった。
・いざ登録を始めてみても「やっぱり俺にはこういうの無理なんだよ、いいよごめんね。」という、最初から自分はデジタルを扱うのは無理だと決めつけている人も何人かいた。特に最後の身分証明フェーズでの離脱が多い印象。
・登録するにあたって、最初のステップから「やって!」とスマホを渡してくる方が非常に多い。
→ 「デジタル=自分には無理」と早々に諦めてしまう方々には成功体験が必要なのではないか。
自分の手で一通りの操作を経験しないと、今後自分一人ではアプリを使用しない(使用できない)可能性が高い。
 運営スタッフにデバイスを渡したり、パスワードを伝えたりすることに抵抗がなく、情報漏洩や詐欺への危機感は、我々が考えるよりも薄いように思われる。

④デジタルリテラシーの差がある
・60代でスムーズにスマホを使いこなす方もいれば40~~50代前後の方でも、スマートフォンの扱いに慣れていない方もいる。
→ 競輪場にいるデジタル若葉さん(年齢問わず)のリテラシーは4段階に分けられると考える。

○レベル0:スマホを持ってない方。「紙でいい」じゃなく、「紙がいい」。
○レベル1:スマホを持って「は」いる方。主に通話機能のみ使用し、アプリ等は初期のまま。ご自身のメールアドレスを知らないことも。(メール受信ボックスを拝見する機会があった際、キャリアからの初期設定メールしかない方もおり、日常的にメールを利用していない様子が伺えた。)スマホを使えないことに引け目を感じている。
○レベル2:「スマホ使えるよ」という方。基本的な機能は使いこなせるが、知らない言葉が出てきたり、自身が経験したことがない事象が起きると頭を抱えてしまう。スマホスキルを習得する機会が少ないだけかもしれない。(例:「QRコードを読み取ってください」と言うと伝わらないが、「カメラでこのマークを読み取ってください」というと通じる。)
○レベル2’:「スマホ使えるよ」という方。基本的な機能は使いこなせるが、知らない言葉が出てきたり、自身が経験したことがない事象が起きると「やっぱやらなくていいや」と投げてしまう。学習コストを高く見積もっている印象。
○レベル3:何も言うことなく、ご自身で登録を進められる方。分からないことがあれば、調べることが習慣になっており、基本自走している。

 

▼結果
新規アプリ登録者数:50名前後

 

▼当日の様子
 

▼おわりに
競輪場にいらっしゃるシニアの方々のスマホ所持率は考えていたよりずっと高いようです。ただし、その使いこなし方やリテラシーには大きな個人差があることが見て取れました。そんな中、必ずしも「予想ツールや車券は“紙”でないといけない」と思う人が多いわけでなく、「教えてくれるなら(やってくれるなら)アプリを使ってみたい」という“アプリに対して前向きな層”もいることが分かりました。ただし、アプリダウンロードやスマホでの登録を最初から諦めてしまう人も多く、そういった方々には成功体験が必要なのだと考えます。また、本人が自分の手で一通りの操作の流れを経験しないと、今後自分一人ではアプリを使用しない(使用できない)可能性が高いと想像されます。自宅や競輪場でアプリをご自身で使う場合、身の回りに「気軽にスマホ操作を教えてくれる人の存在」さえいれば、長期的にアプリを使っていただける可能性はありそうです。そういったサポートをしてくれる存在がいない方に対し、今後もアプリを活用しながら競輪を楽しんでいただくために、どう寄り添っていくのかが課題になりそうです。

デジタルわかる化研究所 研究員 吉本 天志

 

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