デジタルは「便利?」「怖い?」「必要ない?」
三者三様、様々な意見の裏側にある思いを探っていく。

2021.05.21 座談会

デジタルが少し苦手な「デジタル若葉さん」が、どのようにデジタルに向き合っているのかを、今後ご紹介していきたいと思います。
まず第一弾として、身近なシニア層である弊社OB 3名に協力を得て、「デジタル」についてどのような思いを持っているのか、インタビューを行いました。
参加メンバー3名のうち、2名は会議室にお越しいただき、1名はリモート参加。意外にも(?)無事にリモート接続でき、和やかな雰囲気で座談会は始まりました!
デジタルは「便利?」「怖い?」「必要ない?」

三者三様、様々な意見の裏側にある思いを探っていこうと思います。

聞き手…   デジタルわかる化研究所 安藤亮司、岸本暢之、吉本天志
座談会実施日…2021年4月7日
※新型コロナウイルス対策を万全に行い、インタビューを実施しました。

 

齋藤健児(69歳)
まだ会社にPCが導入されていない時代から、プライベートPC(Mac)を持ち歩き、駆使していた。現在もプロモーション企画会社に勤めており、日常でデジタルに触れる機会も多い。

 

正盛和彦(69歳)
コロナ禍がきっかけでFacebookにハマっており、愛犬の投稿や他人とのコミュニケーションを楽しみにしている。デジタルに関しては知りたい欲求が大きいようで、誰かに教えてほしいという前向きな思いを持っている。

 

小形俊(73歳)※リモート参加
現役当時はエクセルの出現に度肝を抜かれた。今は銀行証券やネットバンキングをタブレットなどで行い、資産の一覧などをエクセルで管理する。1日にデジタル端末をいじる時間は3時間以上。

 

デジタルは『便利』がゆえに頼りすぎてしまう。

デジタルに対して『便利』という共通認識はあるが、それ故の落とし穴を危惧している。
中にはデジタルに拒絶を示す完全否定派もいることが分かった。

(正盛)
デジタルは今の世の中に欠かせないものになっているし、便利だと思うよ。こんなに便利なものは使わない手はないし、今回のリモート会議の精度にも感動している。宝の山だけど、私たちがそれに気づけていない部分もあると思う。

(小形)
うん。ビジネス面でも、物凄く早くて効率的な良い仕事ができると思う。

(齋藤)
ただ、便利であるがゆえにそれに頼りすぎている人もいるよね。コピペなどを多用して、文章が書けなくなっている人が散見される。これ以上発展すると思考が鈍っていく人が多いのではないかと危惧している。

(正盛)
実際に私自身も結構スマホに依存して、いつもスマホのことを気にしていることがあるな。そういう時はわざとスマホを遠ざけたりするよ(笑)ただFacebookなどで投稿文を考えるときは結構思考を巡らせたりするから、いい面もあると思う。

(小形)
(デジタルを使って)情報を調べたりするのはいいが、いかにその情報を文章に落とし込むかの“構成力“を養うことが重要で、そこさえできていれば大丈夫なのではないかと思う。

 

※都合上、座談会にはご参加いただけませんでしたが、下記のような完全否定のOBの方もいた。 
「便利さと引き換えに、少しづつ人間らしさが削られてゆく気がして抵抗感を持ってしまう。どうしてもの必要性やそれしか方法が無くなった場合には使わざるを得ないが、それ以外は率先して使う気にはなれない。」

 

SNS投稿は全世界に向けて玄関を開けて大声でしゃべっている感覚。

私のイメージに反し、SNSには参加者全員が何らかの形で接していた。そんな中、それぞれの「自分ルール」や「デジタルに対する恐怖感」が見えてきた。

(齋藤)
SNSは一通りやっているが自分からはその世界に突っ込まない、基本は閲覧するだけ。

(正盛)
私はコロナ感染拡大きっかけでFacebookを始めたんだよね。
元々は他人のやることなんて興味ないし、自分のことをさらけ出すのも嫌だ。と思って、
SNSをやることは敬遠していた。ただ、コロナ禍で気軽に人に会えない今、SNS上で知ってる人と
つながるのは楽しいことに気づいた。日記や手紙よりも気軽にコミュニケーションがとれる。

(小形)
私もTwitterだけやるが、いいねなどの能動的リアクションは起こさない。5人くらい決まった人のブログや記事を読んでいるだけ。自分から発信しない理由は、全世界に向けて、玄関を開けて大声でしゃべっている感覚に陥るから。
(デジタル上に)自分の足跡を残したくない。

(正盛)
分かるよ。望まない人に自分の情報が広がっていくことが気持ち悪いし、怖い。だから、自分ルールを作って、自分からは友達申請しない。あとプロフィール書いていない人から申請が来てもOKしないとか(笑)設定でどうにでもできることを最近知ったんだけど、知っていないと怖い。知識がないから、誤解している部分もあるんだよね。知識を得るとその便利さに気づくことが多い。

(小形)
怖さついでにいうと、クレジットカード情報を色々なところで登録するのとかも怖いね。だから電子決済も絶対に使わない。特にスマホのセキュリティが怖いから、タブレットでしかネットショッピングはしない。

(齋藤)
セキュリティの部分はあるよね。得体がしれないし、何となく怖いからやらないという人も多い。

 

困ったことがないというか、そこまでデジタルを必要に感じていない。

「デジタルを知りたい欲求はあっても言葉や全体像が分からない」という意見が出た。
分からないがゆえの得体の知れなさや恐怖から、「=必要ない」という意見に繋がっているように思える。

(正盛)
Bluetoothって何だ..?デジタルで分からないないことがあって調べても言葉が分からないんだよね。だから何を言っているか分からない。ただ、知りたい欲求はあるので、齋藤さん言うように誰かに教えてほしい。

(小形)
私は困ったことがないというか、そこまでデジタルを必要に感じていないのだと思う。今、分かっていることだけで十分。人によって必要なものが違う。必要がないから興味もないし、取り入れない。逆を言えば必要なものが分からない。損をしていることさえ気づいていない。

(正盛)
確かに自分にとって、必要最低限のモノしか触っていないなあ。極力簡単にしてほしいと思うよね、言葉の分からない我々にも理解しやすいように。英語やらIT用語だらけで日本語になっていないので、連想すらできない。個人個人の能力とその環境(ハード面や教えてくれる人の有無)にもよるだろうけど。

(小形)
そう。実態もない上に、取扱説明書もないので、今の私では専門用語からは何も想像できない。「ストレージ」「プロトコル」って言われても..?という感じ。何よりもデジタルっていうのは全体像が見えない、全てが点に見える。もっと全体がイメージできるようになれば分かりやすいのになあ。逆に言えば、それを分かりやすくしてくれれば、本当に便利な世の中になる。

(齋藤)
「分からないことが分からない。何に困っているのか分からない。」そんな人に対して、「ここ、こういう風にやってみたら便利ですよ、得しますよ」という翻訳のようなことをしてほしい。

 

最後に(まとめ・考察)

最終的に正盛さんの「今の時代、デジタルは避けては通れない。研究所として非常に良いテーマだと思うので、是非とも頑張ってください。」という当研究所へのエールで会は締めくくられた。

■まとめ・考察
お三方とも想定していた以上にデジタルを楽しんでいる印象でした。ただし、自分で活用領域やルールを決めてしまいそこから出ようとしないことが分かりました。
自分自身のこれまでの経験に一部でも置き換えられることは『便利』と感じ、全く置き換えることが出来ない概念や言葉が出てくると、得体のしれない恐怖感を感じて、『必要としていない』という発言につながっているのでは、と考えます。「理解できる=便利」「理解できない=恐怖(必要ない)」といった極端な差が生まれている現状を受け取りました。
また本人たちも宝の山が隠れていると思っており、デジタル機器にもたくさん投資をしているのに、諦めてしまう自分やバリアを作ってしまう自分にジレンマを抱えている人がいます。

他にも「分からないことが分からない人」、「困っている気がするのに何に困っているのか分からない人」がいるようです。中にはデジタル機器をあまり購入できない人もいると思います。その理由は様々で、政府や行政、IT企業への信頼感の差もあるでしょうし、経済的な格差もあります。壮年期に使っていたか使っていなかったか、周囲にその環境があったかなかったかもあります。デジタルデバイドを生み出す要因は千差万別であり、そういった意味で、デジタルデバイド解決は非常に根深い問題と言えます。

様々な本来の便利やお得を享受する人、そしてそれを与える側、さらにはそれを伝える人を掘り下げてインサイトを獲得していく必要があると思います。第1回目でその示唆を得たことは非常に大きな成果でした。

これからもこういった「デジタル若葉さん」の思いを聞いていきたいと考えています。今回の参加メンバーはある程度デジタルを楽しめている方々でしたが、一方で「(デジタルを使うと)人間らしさが削られていく」と、デジタルを敬遠している方がいることも知れました。そういった方にインタビューを行い、ヒントを得て、デジタルの「わからない」を「わかる」に変えていきたいです!

デジタルわかる化研究所 研究員 吉本天志

 

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