プロから学ぶ!不慣れなシニアでも分かりやすい、スマホの教え方

2021.10.11 インタビュー

 デジタル庁発足とともに設立された「デジタルの日」の2021年のテーマが、「#デジタルを贈ろう」であることをご存じだろうか。馴染みのないデジタルを知り、触れる機会を創出することを目的としたテーマである。

 そこで今回は、身近な人のデジタルデビューを支えることが増える時代だからこそ知りたい、シニアの方がスマートフォン(以下:スマホ)利用時に躓きやすいポイントや、教える際に気を付けたいことを、400人以上のシニア世代のスマホデビューに立ち合ってきた女子部JAPAN代表の小林奈巳氏に伺った。

女子部JAPANについて
コンテンツ制作会社として本やWEB記事などの編集に携わる中、2010年に「iPhone女子部」として活動をスタート。
当時まだiPhoneの利用者もそこまで多くない中、世の中にある指南本も理解しにくかったという小林氏自身の経験から、デジタル機器に不慣れな女性向けに、可愛く分かりやすいiPhoneの解説本を作ろうとしたのが始まりだ。
その後2017年には雑誌「ハルメク」からの依頼で70代を中心とした「シニア向けスマホ教室」の講師を務め、今年からは自社でも独自のシニア向けプログラムを開発し提供しはじめている。

 

 

シニアのスマホデビュー!意外な躓きポイント3選

 はじめに傾向を把握するため、スマホを使い始めたシニアの方が躓きやすいポイントを小林氏に伺った。相手を知ることが、自分を“ラク”にすることにも繋がるはずだ。早速紹介していこう。

①文字入力
 小林氏によると、ガラケーでの文字入力経験がある人もいるものの、持っていたとしても電話機能のみの利用者も多く、そういった方にとっては文字入力自体が新しい操作だと言う。加えて、「日本語」「英語」「大文字」「小文字」など、画面の切り替え作業も発生するのが、スマホにおける文字入力の難しさなのだ。
 なるほど、あまりにも当たり前に使っていて、この操作の複雑さをすっかり失念していた。パソコン利用者であればキーボード画面を使った文字入力の方法もあるだろうが、小林氏が教える70代女性を中心とした受講者の多くは、就業時におけるパソコン未利用者も多く、「デジタル機器への文字入力」のハードルはまだまだ高いとのことだ。環境依存の部分も大きいため、今後この躓きポイントは縮小傾向になると考えられるが、現時点での躓きとしては大きい。

②ポップアップ
 「スマホに慣れていないシニアの方は、ポップアップで求められていることを理解するのが難しい」と小林氏は言う。
 たとえば、アプリをインストールした際に表示される「アプリからの通知を許可しますか?」などのポップアップは、よく読めば言葉として理解は出来るのだが、とにかく「許可をするか、しないか」の部分だけが彼らの視界を占領し、何か悪いことが起きるのではないか?という恐怖心が先行してしまう。ポップアップの挙動も彼らを困惑させる原因となっている。突然表示される上に、消して良いものかも分からず、消し方も分かりづらいものが多い。(×の分かりにくさには共感する)
 普段とは異なる想定外な挙動、且つ言っていることが分からないとなると、もはや彼らにとっては奇襲でしかない。シニア世代をターゲットにしたサービス展開を考える際には、気を付けたほうがよさそうだ。

③パスワード
 パスワードの問題は複雑困難を極める。「前に入れたパスワードを忘れてしまう」や「大文字・小文字・数字への対応が困難」といったパターン。(これは先ほどの文字入力の問題に関連する)中には「パスワードの概念自体が、ピンとこない」というパターンもある。例えば、Apple IDで設定したパスワードを、別のサービスであるメルカリでも使えると思っている人もいるそうだ。1つのサービスにつき、1つのパスワードという概念が人によっては浸透していないのである。
 最近ではセキュリティ強化のため二段階認証もメジャーになりつつあるが、これがまた難しい。4桁の数字を送られても、それがどこに届いているのかが分からない。さらに、届いた4桁の数字を1度利用したら不用になることが分からず、次もまた使えるものだと思ってしまう。せっかく1つ乗り越えても、新しいものが登場する度に混乱してしまうのである。
 余談だが、特に冬は手が乾燥し、画面をタッチしても感知しないということが多々起きるそうだ。
シニアの方にスマホを贈る際は、ハンドクリームも一緒にプレゼントしてみてはいかがだろうか?

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