【久喜市教育委員会 GIGAスクール推進室長/川島尚之氏インタビュー】
子どもたちのためにできることはないのか?「子どもにとって利益が最大になる」ことを目指し、実務の現場で推進する「久喜市版未来の教室」の創造とその課題。

2021.08.02 インタビュー

 5月14日に当サイトにて『【埼玉県久喜市 梅田市長インタビュー】【連載】「オール久喜(くき)」で推進する。“誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化”』を掲載しました。(前編 後編
 久喜市は埼玉県の北東部に位置する人口約15万人、6.7万世帯の市です。市内の児童生徒数:小学校 約7000人、中学校 約3500人。学校数は小学校23校、中学校11校の合計34校です。新型コロナウイルスの感染拡大で埼玉県内の小中学校が臨時休校となる中、久喜市は在宅のまま受けられる双方向のオンライン授業に、県内で最も早く取り組むことができた自治体としてクローズアップされました。
 そのインタビューの最後に梅田市長から、「今回の素早く対処できたオンライン授業化、そして久喜市版未来の教室4プラス1のコンセプトの実現に向けての実務的な話も、ぜひ機会があったら取材してみてください。」と紹介いただいたのが、今回インタビューにご協力いただいた、久喜市教育委員会教育部指導課GIGAスクール推進室長の川島尚之さんです。久喜市教育委員会は、鷲宮神社があることで有名な東武伊勢崎線鷲宮駅から徒歩15分にある、久喜市鷲宮総合支所(旧鷲宮町役場)にあります。久喜市教育委員会教育部指導課川島さんは、双方向のオンライン授業への早期取り組みで非常に大きな役割を担いました。翌日にもGoogle社主催のGoogle for Educationイベントへの登壇を予定されているという多忙な中にもかかわらず、コロナ禍2020年3月の柿沼教育長による「子どもたちのためにできることはないのか!何もしないなんてことがあり得るのか!」発言から準備がスタートした、全市立小・中学校34校のオンライン学習支援実現の際の様々なご経験、そして「久喜市版未来の教室」を創造していくにあたっての課題、教育現場に纏わるデジタルデバイドへの取り組みなどについて、とても丁寧に話してくれました。

川島尚之氏プロフィール・・・久喜市教育委員会教育部指導課・指導主事兼指導課主幹兼GIGAスクール推進室長。東京学芸大学教育学部卒業。埼玉県公立小学校教諭を経て、2017年から埼玉県久喜市教育委員会指導主事。2021年より埼玉県久喜市教育委員会・指導課主幹兼GIGAスクール推進室長。

聞き手・撮影…デジタルわかる化研究所 岸本暢之
インタビュー実施日…2021年6月18日

(川島尚之さん近影 久喜市教育委員会教育部指導課会議室にて)

 

今年度からの新組織GIGAスクール推進室が行う、学校の情報化を手段とした子供たちへの質の高い教育提供へのチャレンジ。

——本サイトの読者はデジタルデバイドに興味のあるビジネスマンが多いと思われます。わかりやすく、教育委員会という組織の立場役割について、そして久喜市教育委員会の指導課、GIGAスクール推進室について教えてください。

(川島)まず、良く間違われますし、現場の教員からも教育委員会と呼ばれることが多いのですが、正確に申し上げますと我々は教育委員会ではないんです。私たちは教育委員会事務局と申します。教育委員会は、教育の政治的中立性を確保しながら、教育・文化の振興を図るため、知事や市町村長から独立した行政委員会として設置された、合議制の執行機関です。組織は教育長と、地方自治体の長から推薦を受けてで議会に諮って承認された教育委員で構成されているもので、久喜市では教育長と4人の教育委員をあわせた5人により構成されています。そこで地域のさまざまな教育に関することを決定しています。教育委員会の方針、決定のもとに具体的な執行をするのが教育委員会事務局となります。

——教育委員会の所管されていることを簡単にご説明いただけますか。

(川島)まずは学校に関することで、学校の管理や監督をする役割があります。そして学校を指導支援する役割があります。この他に、その地域の教育に関することということ、例えばスポーツの振興だったり文化財の保護だったり、生涯学習の推進だったり・・・というのも教育委員会の所管する事務になります。
 地方教育行政法21条で教育委員会の職務権限として定められているのですが、実際には細かく見ると19の業務があります。学校の設置から教員の任命・懲戒免職処分などの人事、生徒の入学・転学・退学、校舎など施設や設備、教科書・教材に関する決定、学校給食などから始まりまして、スポーツや文化財の保護に関すること、ユネスコ活動に関することなども所管事務として含まれています。
 久喜市教育委員会事務局の場合はこちら19の項目をそれぞれ、教育総務課、学務課、学校給食課、指導課、生涯学習課、スポーツ振興課、文化財保護課、中央公民館という組織に分けて執行しています。

——川島さんはその指導課の中に置かれているGIGAスクール推進室の室長というお立場ということですね。

(川島)私は指導主事であり、指導課の主幹という立場と指導課付GIGAスクール推進室の室長という立場となっています。こちらも法律で定められているのですが指導主事というのは、教育委員会事務局に置かねばならない専門的教育職員で、学校教育に関する専門的事項の指導に関する事務に従事することが、職務として定められています。指導主事は教員出身者であることが多いですね。
 その指導課の業務としては、教職員の管理監督、教育課程の管理監督、学校の情報化の推進、教職員の資質能力の向上、教員からと未就学児を含む保護者の方たちからの両面の教育相談機能の充実、このあたりが指導課の業務になります。

——その指導課の中にGIGAスクール推進室が置かれているというわけですね。

(川島)このGIGAスクール推進室は、学校の情報化の推進を担っています。ただし、ここでご理解いただきたいことは、学校の情報化自体は目的ではありません。あくまで情報化というのは手段のひとつでしかなくて、我々が目指しているのは子供たちにいかに質の高い教育を提供できるかということです。そのためにICTは効果的なツールであるという考えから、学校の情報化を進めていこうという業務になっています。そのため、情報化を進めながらも、その使い方の支援、教員への指導、教員がレベルアップしていくための研修、そこで使う教科書、さらにはその関係するネットワークやセキュリティ・・・こういった関連する幅広い分野の構築をして行くのがGIGA推進室ということになります。

——この久喜市には、教育委員会事務局が所管されている小中学校は何校あるんでしょうか?

(川島)小学校が22、中学校が11、合わせて33校ですね。ちなみにGIGA推進室に職員は私含めて7名おります。

——33校分のこの管理監督業務を行き届かせることを7名で行うというのも、とても大変な気がします。このGIGAスクール推進室は今年度新設の組織と梅田市長からお伺いしました。

(川島)昨年度までは学校指導に関わる部分は指導課が、教育環境を整備する部分は学務課が行っておりました。ただ実際には学務課が様々なものを用意しても、現場でそれを使おうとすると上手く使えない・・・もっと現場の意見を取り入れてほしい・・・なんてこともあったわけです。その一因としては指導する課と調達する課が別だったから。それを一体化して、調達から指導までを1つのセクションの中で可能にしようということで、GIGA推進室が出来上がりました。
 現在は私含めて指導主事が5名、もともと市の職員だった主事が1名、特別に配置されていますICT専門官が1名となります。このICT専門官は、もともと企業でのSE経験もある学校の事務員だったのですが、昨年度コロナ禍における、久喜市の授業のオンライン化に大変貢献していただいた方で、今年度当室に来ていただきました。ちなみに、私を含めて3人の指導主事は、Google認定教育者の資格を持っています。

——川島さんご自身はどういったご経歴を経て、指導課に来たんですか?

(川島)私は公立の小学校教員を2校経験しました。2校目では主幹教諭をさせていただいて、その時の小学校が文部科学省の指定の研究開発学校だったんです。この研究開発学校は、文科省によって定められた教育過程を離れて、これからこういう教育が必要だろうというものを自分たちで構築していくことができるんです。その時に私はその研究開発学校の研究主任をしておりました。そこで研究していたのが、まさに「久喜市版未来の教室」のコンセプトの一つでもあるSTEAM教育※だったんです。
(※STEAMは、Science、Technology、Engineering、Art、Mathematics の頭文字。詳細については、久喜市梅田市長インタビュー後編を参照。)
 ICTに代表される、科学技術を活用したこれからの教育のあり方を研究しておりました。その研究開発学校での経験を経て、指導課に指導主事として拝命することになりました。

 

自分たちが実現したい学校教育の概念をまとめた、久喜市版未来の教室4プラス1のコンセプト。それぞれのコンセプトにはそれぞれのゴールを設定して、確実な実現を目指す。

——今話にも出た、GIGAスクール推進室の目指すところでもあると推察されます、久喜市版『未来の教室』事業の概要についてお伺いできますか。

(川島)以前梅田市長のインタビューでも詳しく話されていましたが(※久喜市版未来の教室の詳細については久喜市梅田市長インタビュー後編を参照)、この事業は、我々が実現したい学校教育の姿をまとめたものであり、教育現場にICTを積極的に取り入れ、4プラス1のコンセプトを実現するものです。
 4プラス1のコンセプトというのは、1つ目がオンライン教育の実施、2つ目が個別最適な学びを提供すること、3つ目がSTEAM化された学びを提供すること、4つ目が公務を効率化していること、そしてプラス1として、こういったことを実現するための教員を育成していくことです。

——このそれぞれのコンセプトに関しては、なにかKPIのようなものは設定されているのでしょうか?

(川島)それぞれのコンセプトは短期的ないくつかのゴールを設定しています。
 例えばオンライン教育の実施のゴールについては、普段から現実の教室とクラウド上の仮想教室が連動するように授業を行っていくことで、有事があったとしても速やかにオンライン授業に移行できる状態を作るということ。さらにGoogle Meetテレビ会議システムなどを使用して、国内外問わず他の学校、地域企業と繋がった学習を行うことができるようにするということ。そしてこれまで支援の手段が限られていた、様々な理由で学校に来ることが難しい児童生徒も、オンラインで教育を受ける、自宅や病室から授業に参加するという1つの選択肢が取れるようになるということを、3つのゴールとして設定しています。

 2つ目のコンセプトである、客観的継続的データに基づく個別最適な学びの提供に関しましては、2つのゴールを設定しています。まずは知識修得・定着のための反復学習は、オンライン上のドリルやワークを利用することで、学習状況に応じて自動で復習すべき内容が示唆されるようにすることです。

——そのような個別最適化は、今までの大人数の教室では難しいですよね。

(川島)そうですね。例えば子供たちが宿題をやって学校に持ってきて、それを教員が丸をつけて返すのですが、それに対して「じゃあ、あなたは次この問題やってね」と個別に復習問題を提示していくのは、かなり難しいことでした。それをデジタル化、データ化して行うことによって、生徒は宿題が終わった時点で即時採点されて、自分の間違いがどこだったのかを認知できて、あなたは次はこれやると良いと示唆されるようになります。そうすると、今までのように全員一律に同じ宿題が出される必要がなくなってきます。例えばこの単元は、もう分かってるという生徒に対しては発展的な、逆にまだ全然分からないという生徒に対しては基礎的な課題を、といったように、その子の現在地を常に計っていきながら、最適な宿題を提示することができるようになると考えています。

——君はこれをやるとより良いよというものを、ICT技術で個別にレコメンドできて、進みたい子はどんどん進めるようになっていくということですね。

(川島)その通りです。逆になかなか言い出せなくて、取り残されてしまう生徒もいなくなっていくというのが理想となりますね。

 そしてもう一つのゴールですが、学習をコンピューター上で行うことによって、学習記録がデータ化されていき、発言していない生徒も含めた1人ひとりの学習状況が把握しやすくなる状態を作ることです。
 これは私が教員時代にエピソード評価と名付けて実際にやっていたことなのですが、授業中、生徒の発言や行動をエピソードとして全て記録していくのです。それを1時間の中で全員分記録していくんですね。そして、そのエピソード記録が次の時間、次の時間とどう変わっていくかなんて言うものを分析して、個別の支援に生かしていったんです。

——手法はアナログですが、生徒たちの学習行動のデータを取っていったということですね。

(川島)なぜそういうことをやりたかったかと言えば、例えば学習の中で生徒たちがグループ活動をしているとします。その活動は結果として、グループとしては成功したかもしれない。でも中身をよく見てみると、その中の誰か一人がすごく活躍していて、実は誰かは非常に困った状態のままいたりするケースが実は往々にしてあります。ただ現場の教員はなかなかそこまで目が行き届かない。でも本当は1人1人に合わせた支援をすべきだ!と私は思っていました。それを実現する方策として、このエピソード評価を実施して発表してみたんですが、当時の文科省からは「これを全国でやろうなんて言ったら、教員の働き方はとんでもないことになってしまうので、今は無理だよ。」と言われてしまいました(笑)。

——そういった思いも、デジタルデータ化することによって、だいぶ可能になってきたということですね。

(川島)その通りです。他にも例えば、その授業中に発言はしていないけれども、学びをノートには記録していたという子もいます。今までであれば教員がそれを確認できるのは、授業が終わってノートを集めた時でしたが、それがリアルタイムで見られる。本当は発言してないけど良い考えを持っている子や、本当は困っているけど自分は困ってるって表現できなかった子へ、教員からのアプローチが届くようになる。学習記録をデータ化することによって、即時的に支援を還元できるような状態になるというのが、ゴールになります。

——当研究所もオリコムという広告会社を母体としていますが、広告もいまやデジタルの力とユーザーのデータを駆使して、極力個別最適に配信タイミング、デザイン、配信するメディアなどをコントロールする時代になっています。

(川島)まさしくそういうことですね。それを教育でもやりましょうっていう話です。あとこれはまだ研究段階ですが、生徒たち一人一人が自分で課題を立てて、AIとの関係性の中で課題達成に向かって自律的に学習をする。それを教員はサポートする。人と人とをコーディネートするところは、教員が繋いでいく・・・そういった授業がやがてできるようになることをも目指して、今研究、トライアルをしています。

 そして3つ目のコンセプトが、汎用的な能力を養うSTEAM化された学びで、我々はここを非常に重要視しています。前項の個別最適な学びは、そこで何か育むものがあるわけではなくて、従来のものを個別に最適化していくことで、効率的に適応していこうという性質のものです。
 ですが、このSTEAM化された学びは、“汎用的な能力”を育むという性質をもっています。それは創造的に考える力だったり、批判的に物事を捉える能力だったり、人と協働して行く資質だったり、そういった資質能力が育まれる学習です。このSTEAM化の核としては、子供たちのワクワクを大事にすることです。子供たちが自ら学びに向かっていくような仕掛けをしなければ、そもそも汎用的な能力というのは育まれない、と考えています。知識を積み重ねて何かを知るではなくて、自身が目的をもって知識を獲得して行く学習スタイルに、変えていくことが必要です。

——そうなってくると、そもそも教科の枠ってあまり関係なくなってきますよね。

(川島)はい。そのために、文理融合のまさにSTEAMを目指して行くということを大事に考えています。

——こういった文理融合のための新しい教科みたいなものは創造されているのでしょうか。

(川島)これがまだ難しいところでして。実は私が研究開発学校で研究していたときは、新たにそういう教科を作りました。ですが、今の通常の公立学校は、新設の枠組みを作ろうとした場合、定められた教育課程を確実に実施したうえで、プラスアルファとして実施することになるので、学校独自ではなかなか難しいというのが実状です。ですので今は、それぞれの教科をつなぎ合わせて、教科横断的な大単元を作っています。

 このSTEAM化された学びを実現するために3つのゴールを設定しています。まずは地域や企業と連携して社会とつながる教科横断的なPBL(Problem Based Learning)を実施することです。子供たちにとってワクワクする魅力のある課題ってなんだろう?って考えたときに、実際の世界とつながっていること、実際の社会とつながっていること、そこが魅力なんだろうと思っています。社会とつながる教科横断的な単元を実施することを一つのゴールにしています。
 2つ目は各教科の学びを、プログラミング的思考を含む情報活用能力※と結び付けて、学習していける状態にすることです。例えばこれから子供たちは鉛筆で書く機会よりも、端末を操作する機会の方がきっと増えていきます。この情報活用能力っていうのは、非常に重要な力になってくるなと思っていて、それぞれの教科の中で、そういう情報活用活用能力を少しずつ育んでいけるように仕掛けていくこととなります。(※情報活用能力とは、世の中の様々な事象を情報とその結び付きとして捉え、情報及び情報技術を適切かつ効果的に活用して,問題を発見・解決したり自分の考えを形成したりしていくために必要な資質・能力のこと)

——コンピュータを使った内容に限定されないとはいえ、ICT・デジタルの活用がこれからの教育の内容や質にも非常に関わってくることが感じれられます。

(川島)そして最後は、各教科の中でも単元ごとにPBL(Problem Based Learning)化を図るというのが3つ目のゴールになります。要するに先に解決したい何かがあって、それに向かって取り組む学習のことです。これも自分の小学校教諭の時の経験ですが、こういうことを行ったことがあります。
 学校の児童は、このお祭りが大好きです。ただ、もちろん児童も見ているのですが、祭りの後はごみがたくさん散らばっているんです。授業をそんな写真からスタートして、これを自分たちできれいに出来ないだろうか?と解決すべき課題を与えます。児童たちのアイディアは「ゴミ箱を作って設置しよう!」でした。それじゃあゴミ箱ってどういう仕組みでできているんだろうか?なんて言う探究活動を行ったり、加工するためのダンボールを切る技術を図工で獲得していったり、理科の時間に使った豆電球の知識を使って、夜になったら光るゴミ箱にしようなんてアイディアを考えたりもします。久喜には大きな提灯祭りがあります。それを実際に児童たちで作り、提灯祭りの日に設置します。「僕たちのごみ箱に入れてるぞ!」なんて言いながら観察して(笑)。そして祭りが終わった後、そのゴミ箱を回収してきて中を見ると、気づきがたくさんあるんです。
 たくさん入っているごみ箱もあれば、あまり入ってないものもある。分別されているところもあれば、そうでないものもある。その事由を評価し、レビューしていくんです。そしてそのレビューをもとに、その活動がまた次の年の同学年でも行われていく・・・。

——いわゆるマーケティングでいうPDCA(Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善))を回していくんですね。

(川島)そうなんです。目的は祭りをきれいにすることです。その為に必要だから、段ボールの加工の仕方を学びます。必要だから、理科で学習した豆電球を生かそうとしています。目的が先にあって、必要だから知識を獲得していく。すると、いつも知識というものが、単純に教わった積み重ねではなく、常に「何か」と繋がるものとして獲得されていくようになるわけです。そういった学習方法が“汎用的な能力”の育成に繋がっていくのです。

——それをさらに推し進めるためにICTを活用して、この単元とあの単元のこの段階でこのレベルまで学んだから、これがこの生徒ならできる可能性があるよ、のようなデータの蓄積によって、個々の生徒に対する教育の仕方を考えていくことができるというわけですね。

(川島)その通りです。デジタル端末は児童生徒たちにとっても学びのツールとして有意義だし、教員にとっても自分達の取り組みを客観化していくことができるツールとなるのです。

 4つ目のコンセプトは、統合型アプリケーション、Google Workspaceによる校務の効率化です。これまでVPNでインターネットとは分離されて作られていた学校のネットワークを、今はクラウド上のWorkspaceに移していくことを進めています。そうすることによって、これまではバラバラに置かれていたエクセルやワードのデータファイルを関連付けることが可能になっていきます。

——今後は全データをクラウド化するご予定ですか?

(川島)もちろん学校は個人情報もかなり扱っているのでセキュリティ上、すぐに全てはできませんが、なるべく「全」に向けて推進しています。可能な限りクラウド上にデータを置き、連携させることで、ペーパーレス化、自動化・効率化を図っています。
 例えば教員の業務の中で欠席ひとつを例に挙げてみます。まず、保護者が紙で欠席届けを記入します。保護者はそれを通学班の保護者に依頼をします。それが学校に届きます。すると受け取った教員は担当の教員に渡します。今度はそれを健康観察簿に記録し、別の出席簿に記録し、そしてそれを職員室前の欠席黒板に記録します。それを見た養護教諭は保健日誌に記録し、それを見た教頭先生は学校日誌に記録し・・・と、「1」という数字を入力するのにこれだけの業務が発生していました。こういうことをデータを連携させて効率化していけると思っています。

 授業に関しても同様です。市内のほとんどの学校が同じ時期に同じ単元の学習を行っています。よってデータを連携することによって、使っている教材がシェアできるようになります。例えばGoogleフォームで10問のミニテストを10分で作ります。これまで教員は、ミニテストを丸つけるのに10分くらいはかけているわけですけれども、その時間をGoogleフォームで作る10分に変換してみるということです。すると採点は生徒が回答を入力した時点で終わりますので0分になります。しかもそこで作成した問題は他校とシェアしていくことができます。採点を自動化して、さらにはテストを作る手間も効率化していく。こんな風にしてデータをクラウド化して、シェアする仕組みを作っていくというのが、ゴールになります。

——会議などはどうされているのですか?

(川島)教員の会議も、今は可能な限りオンラインで実施しています。また、内容によっては、現地参加とオンライン参加をミックスして行うこともあります。

 

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